臨終が近い人の表情や身体的兆候とは?ご家族がやれることもご紹介

2023.10.26

「臨終」とは、死を迎える瞬間をさす言葉です。臨終が近づくと、人の表情には変化が生じるといわれています。また、表情以外にも兆候が見られ、心の状態も変わることがあるようです。

ここでは、臨終が近い人に現れる表情や身体的兆候、精神状態などについて解説します。

臨終が近い人の表情

人は臨終が近づくと、その兆候を表情から読み取れる場合があります。具体的には、目や肌の色の変化が判断基準です、ここでは、臨終が近い人の表情について解説します。

目の色の変化

人は死が間近に迫ると、目から光が消え、色が濁り始めます。同時に、目の力が弱くなり、焦点も合わなくなります。

これらの原因のひとつは、食事や水分が摂れなくなったことによるエネルギーの減少です。
エネルギーがなくなると顔の表情も乏しくなり、目が落ちくぼみ、力がないように見えます。

さらに臨終が近い人は、体の機能低下や酸素不足などによって筋肉が衰え、目を開けて眠ることもよくあるでしょう。その場合、目がぼんやりと力なく見えたり、焦点が合っていないように見えたりします。

肌の色や状態の変化

人は臨終が近づくと、肌の色が青白く変化する場合があります。これは、心臓や呼吸器官などの機能が低下することにより、体内の酸素が不足することが原因です。

心臓が正常に動かなくなったり、呼吸困難になったりすることで血液の酸素濃度が低下すると青紫色になり、その結果、肌の色が青白く変わるといわれています。

また血圧が下がるため、暑くないときに冷たい汗をかくこともあるでしょう。通常は、緊張や興奮で自律神経と呼ばれる体のバランスを調節する仕組みが働いて、冷や汗をかきます。
しかし臨終が近い人は、そのような原因がない場合でも血圧は下がり、体温や血液の酸素濃度などのバランスが崩れることは多いです。

臨終が近い人の身体的兆候

臨終が近い人の体には、いくつかの兆候が見られます。体の変化を見逃すことのないように注意しましょう。ここでは、臨終が近い人の身体的兆候について解説します。

飲食や排泄の量が変化する

人は臨終が近づくと、体力がなくなり飲み込む力も弱くなって、次第に飲食の量が少なくなくなります。また、心臓や腎臓の働きも低下するため、尿の量が少なくなったり出なくなったりすることも多いです。

このような状態の場合、点滴をしたり無理に食事をさせたりしても、体内で吸収できません。そのため、かえって苦しい思いをさせてしまう場合があるため注意は必要です。

眠っている時間が多くなる

人は脳の働きが低下すると、はっきりした意識を保ちにくくなるため、昼夜関係なく眠っている時間が多くなります。寝ているときは静かに見守り、話しかけるときはゆっくり、はっきり伝えるとよいでしょう。

意識が混濁する

人は脳の働きが低下すると、幻覚や妄想(せん妄:せんもう)と呼ばれる症状が現れることはあります。呼びかけたり触れたりしても反応がないことや、会話中に眠ってしまい意識がぼんやりした状態が続くこともあるでしょう。

また、臨終が近い人は注意力や思考力が低下し、眠気や意識の混濁で会話が成り立たない場合もあります。話しかけても返事はないかもしれませんが、聞こえている場合も多いようです。そのため、優しい言葉をかけるように心がけましょう。

呼吸が変化する

死期が近くなると「下顎(かがく)呼吸」と「死前喘鳴(しぜんぜんめい)」と呼ばれる現象が起こり、呼吸が変化します。

下顎呼吸とは、顎を下げてガクガクさせ、あえぐように空気を強く吸う呼吸です。体が自動的に呼吸できるようにする呼吸中枢と呼ばれる神経の働きが、ほぼ失われているために起こるといわれています。

一方、死前喘鳴は、息を吸ったり吐いたりする際にゴロゴロという音が発生し、呼吸音が大きくなる症状です。

下顎呼吸や死前喘鳴は通常の呼吸と違うため、周囲は心配しますが、本人は昏睡状態で苦痛を感じていないといわれています。ただし安易に判断せず、不安な場合は医師に相談するのがおすすめです。

手足が冷えて変色する

臨終が近い人は、手足の先から紫色に変化したり、冷たくなったりします。この変色は「チアノーゼ」と呼ばれる循環障害のひとつです。心臓の働きが低下し、血液を全身に送る機能が衰えることによって起こります。

血液中の酸素濃度が低下すると、皮膚や粘膜の表面にある静脈や毛細血管の血液が酸素を失います。その結果、鮮赤色のヘモグロビンと呼ばれる酸素を運ぶタンパク質の割合が減るため、青みがかった紫色に見えるそうです。また、血流も悪くなるため体温が下がり、手足も冷たくなります。

目や手に力が入らなくなる

臨終が近い人は、手や目に力が入らなくなります。食事や水分が摂取できなくなると、体重が減少し、顔が痩せてしまいます。これにより顔の筋肉が衰え、目にも力が入らなくなるのが特徴です。

また、心臓に優先して血を回すため、血流が全身に行き渡らず、手足が冷たくなります。その結果、末端である手足への血流が滞り、手足に力が入らなくなるわけです。

これらの現象は、生命力の低下を示す重要な兆候であり、看護師や医師はこれらの症状を見て臨終が近いと判断します。

臨終が近い人の心の状態

人は臨終が近づくと、表情や身体的な変化のほかに、精神的な変化も現れます。これからご紹介する現象は、世界に共通して見られるそうです。臨終が近い人はどのような心の状態なのかを確認しておきましょう。

消極的になり落ち着きがなくなる

人は臨終が近づくと、消極的になり受け身になる傾向が多いそうです。例えば、新聞やテレビなど、外部のものに興味を示さなくなったり、趣味の散歩に出かけなくなったりします。

また臨終が近い人は、落ち着きがなくなる場合もあるようです。具体的には、点滴を外そうとしたり、シーツを引っ張ったりするといった行動が見られます。これらの行動の理由には、痛みや薬の副作用などが考えられるでしょう。

中治り(なかなおり)現象がみられる

中治り現象とは、臨終に近づいた人が一時的に回復し、元気になる状態です。海外では「ラストラリー(last rally)」と呼ばれる現象で、広く知られています。日本では、燃え尽きる前に一瞬大きく燃え上がるろうそくの炎に例えられます。

まったく食べ物を受け付けなかった人が、突然「水が飲みたい」「アイスクリームが食べたい 」と訴えることもあるようです。中治り現象は、副腎皮質や自律神経などから分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンが、エネルギー源になっているという説もあります。

お迎え現象がみられる

その場にいない人や、すでに亡くなった人が臨終間近な人の前に現れることを「お迎え現象」と呼びます。看護師や家族が部屋に来たときに「誰もいないのに、誰かと話していた」という現象が、たびたび報告されているようです。

臨終に立ち会う際の留意点

臨終に立ち会う際は、大切な人が安心して最期を迎えられるように心がけましょう。そのためには、以下の点に留意することが大切です。

・できるだけ家族全員で看取る
・後悔のないように別れを告げる
・死後のことや不満を言わない

ここでは、それぞれの注意点を確認しておきましょう。

できるだけ家族全員で看取る

大切な時間を長く共有してきたご家族に見守られることで、安らかに最期を迎えられるでしょう。できるだけ、家族全員で看取れるように準備することが大切です。

後悔のないように別れを告げる

最期を迎える前に、大切なことや感謝の気持ちを伝えることが重要です。感謝の気持ちや思い出話を分かち合い、亡くなる人に対して最後の思いを伝えましょう。また言葉だけではなく、手を握ったり撫でたりすることも、励ましや安心感につながります。

死後のことや不満を言わない

大切な人の前で、死後の手続きなどについて話したり、愚痴や不満をこぼしたりするのは避けましょう。人の聴覚は、亡くなる直前まで残るといわれています。眠っているように見えても、実は意識があることも十分に考えられます。大切な人の前では、くれぐれも葬儀や遺産分配の話、愚痴や不満を言うのは控えるのが礼儀です。

臨終間際にご家族ができること

臨終が近づくその間際、大切な人のためにご家族ができることはいくつかあります。
具体的に、どのようなことができるのかを確認しておきましょう。

親族や友人に連絡

大切な人がもうすぐ亡くなるとわかった場合は、できるだけ早くご親族に知らせましょう。
知らせる範囲は、一般的に3親等までといわれています。

3親等の範囲は親や兄弟姉妹、祖父母、孫、おじ、おば、曾祖父母(親の祖父母)、曾孫(孫の子)、甥、姪(おじ、おばの子)です。また3親等以外のご親族やご友人でも、会いたいだろうと思われる人がいる場合は、その人たちにも伝えるようにしましょう。

話しかける

人の聴覚は最期まで残るといわれており、死が間近な人でも音に反応することがわかっています。応答がなくても聞こえている可能性は十分にあるため「もっと話しておけばよかった……」と後悔しないためにも、感謝の言葉などを穏やかにゆっくりと話しかけましょう。

そばで見守る

眠ってばかりで呼びかけに反応がなくても、大切な人のそばで優しく見守りましょう。言葉を交わすことはできなくても、一緒に過ごすことによって、大切な人と残る家族にとってかけがえのない時間になります。

その他にやるべきこと

汚れてしまった部分をきれいにしてあげることも、ご家族ができることのひとつです。臨終が近い人は体を自由に動かしたり、普段通りに呼吸したりするのが難しい場合はあります。

無意識の状態でも唾液や汗、涙、目やになどが出る場合は多いです。ご家族がそばにいるときは、優しく拭くなどして清潔にしてあげるとよいでしょう。

大切な人の臨終後にやるべきこと

大切な人が臨終した後、大きな悲しみにさいなまれるご遺族には、やるべきことが多くあります。ご遺族が葬儀までに行うべきことは、以下のようにまとめられます。

臨終時にご家族がやるべきこと

大切な人を看取った後、ご遺族は速やかに以下のような対応を行う必要があります。

・ご親族、知人、ご友人、勤務先などへの連絡
・故人様の唇を潤す:「末期の水」を含ませた脱脂綿やガーゼで清拭・着替え・死化粧
・死亡診断書を受け取る
・安置室にご遺体を安置
・葬儀会社へ連絡し、ご遺体の搬送先を決定

なお、大切な人が臨終した後の対応については、以下記事の内容もご参照ください。

関連記事:『在宅で最期を迎える自宅看取りの準備や手順とは?』

関連記事:『死後の遺体処理とは?ご遺体の変化となくなってからの流れ』

関連記事:『湯灌の目的とは?歴史や費用などについても紹介』

関連記事:『ラストメイクとも呼ばれる死化粧とは?湯灌や白装束についても解説』

ご遺体の搬送・安置

臨終後は、故人様のご遺体を病院の安置室、または葬儀会社などの安置室などへ搬送する必要があります。そのため速やかに退院手続きを行い、ご遺体の搬送先を決めなくてはいけません。

・ご遺体搬送先の受入準備
・退院手続き・精算

また、ご遺体の安置方法には自宅安置もあります。以下記事の内容をご参照ください。

関連記事:『ご遺体安置の実施方法は「自宅安置」と「預かり安置」の2種類!メリット・デメリットを紹介

葬儀の打ち合わせ

ご遺体の搬送先の検討と並行して、葬儀会社との打合せも行う必要があります。

・葬儀内容決定
・喪主の決定
・葬儀日程、形式、内容、規模、費用などの打ち合わせ

葬儀会社を決めるときには、以下のポイントに注意しましょう。

・ご遺族の希望を聞いてくれる
・親身に相談に乗ってくれる
・対応が丁寧
・明確な費用明細を提供してくれる

これらの手順と注意点を守りながら、故人様とご遺族にとって最善の葬儀を行えるように準備しましょう。

物品準備・手続

お通夜や葬儀を行うために、以下のような準備も必要です。

・遺影写真、故人様の服、ご遺族の喪服、喪主・ご親族代表の挨拶文などの準備
・役所に死亡届を提出

なお、遺影や死亡届の詳細については、以下の記事をご参照ください。

関連記事:『遺影の背景にはルールがある?おすすめの色や背景を紹介
関連記事:『死亡診断書と死亡届の違いとは?それぞれの書き方や提出先なども解説

まとめ

仏教には「臨終正念(りんじゅうしょうねん)」という言葉があります。落ち着いた気持ちで死を迎えること、死に際しても心静かに念仏を唱えることが重要であるという意味です。死に際の人相によって、極楽上へ往生できるかどうかが決まると考えられています。

今回は、臨終が近い人に現れる表情や身体的兆候、精神状態などについて解説しました。
目の色が濁ったり、肌が青白くなったりする表情の変化は、臨終が近づいている兆候です。

ここまでにお話しした兆候が現れる際は、医師のアドバイスを受けながら、大切な人が心地よく心穏やかに、その時を迎えられるよう配慮しましょう。

大切な人が亡くなることは、非常に辛く悲しいことです。臨終が近い人に現れるさまざまな兆候を知っておくことで、深い悲しみの中でも、心を落ち着け、悔いのないお別れができるのではないでしょうか。

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