ラストメイクとも呼ばれる死化粧とは?湯灌や白装束についても解説

2022.11.30

故人様がお亡くなりになった際、葬儀の前に死化粧を施すことが一般的です。死化粧はラストメイクとも呼ばれ、おもに看護師や専門の業者によって行われます。

死化粧を施すことで、故人様のご遺体はどのような状況になるのでしょうか。本記事では、ラストメイクとも呼ばれる死化粧がどのようなものか解説します。また、湯灌や白装束の詳細についても掘り下げているので、この機会に見識を深めてみてはいかがでしょうか。

死化粧(ラストメイク)とは

死化粧(ラストメイク)とは、衛生的な処置や防腐、防臭、また故人様を安らかなお顔立ちに整え、自然な顔色に見えるように薄化粧を施すことです。死化粧は、送り化粧と呼ばれる場合もあります。死化粧は、看護師や病院と提携している専門の業者などによって実施されることが多いです。

着せ替えも含めた故人様の身支度全般を、死化粧と呼ぶが一般的です。ヘアースタイルを整え、男性の場合は髭の処理も行われます。

死化粧(ラストメイク)とエンゼルケアの違い

死化粧とエンゼルケアは、どちらもほぼ同じものだと認識されていますが、厳密には異なるものです。

本来、エンゼルケアは死化粧や湯灌なども含めた、故人様の死後処理全般をさします。一方、死化粧は、あくまでも故人様の外見を整える処理を行うことです。しかし、多くの方が「死化粧=エンゼルケア」と認識しているケースも多いことから、厳密には分類されずに使われています。

死化粧(ラストメイク)とエンバーミングの違い

エンバーミングとは、ご遺体の腐食を抑制するための処置です。ご遺体から体液や内臓などを取り除き、特殊な薬品を注入することによって、腐敗を抑制します。つまり、ご遺体の外部をケアするものが死化粧で、内部をケアするものがエンバーミングといえるでしょう。

葬儀会場の調整ができない場合や、参列者のスケジュールが合わず葬儀の実施までに期間が空くときには、エンバーミングが施されるケースも多いです。

エンバーミングやご遺体の変化については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご確認ください。

関連記事:死後の遺体処理とは?ご遺体の変化となくなってからの流れ

死化粧(ラストメイク)の目的

死化粧のおもな目的は、衛生面とご遺族のケアです。故人様を生前の姿に近づけることで、安心感が得られるでしょう。

故人様のお肌は乾燥しやすく、非常にデリケートな状態です。保湿が重要で、プロのメイクさんが使うブラシなどを用いて、優しく丁寧に少しずつ色を混ぜ、できるだけ生前の状態に近いお顔に見えるよう送り化粧をします。もちろん、お顔の表情も柔らかく、安らかになるように整えます。

納棺師と呼ばれるプロの手によって、死化粧を施された故人様に対面されたご遺族からは「こんなにきれいにしてもらって……」「今にも目を覚ましそう」といったお声いただくことも多いです。

「メイク」と聞くと、女性のお化粧をイメージされる方が多いかもしれません。
「うちのおばあちゃんは、お化粧しない人だったからいらないわ」とおっしゃる方も、ときどきいらっしゃいます。しかし死化粧は、日頃女性が行うメイクとは大きく性質が異なるものです。

亡くなるときの状況はもちろん、表情も自分では選べません。また、亡くなってから時間が経つにつれて、生前と比べて少しずつお顔の色が損なわれていきます。非常に残念なことですが、亡くなられたその瞬間から故人様のお体は傷みはじめてしまうのです。

最期のお別れの際、ご遺族や葬儀の参列者の方々に、きれいで安らかなお顔を見ていただければ、ほんの少しだけかもしれませんが、ほっとした気持ちでお別れができるかもしれません。

エンゲルケア・死化粧(ラストメイク)の流れ

死化粧とエンゼルケアがどのように進められるのか、一般的な流れについて確認しておきましょう。

医療器具の抜去

故人様がお亡くなりになった後、まずご遺体にささったドレーンや点滴などの医療器具を抜去します。こちらの作業は、医師や看護師によって実施されることが一般的です。

内容物・排泄物の除去

故人様のご遺体を清潔に保つために、胃の中の内容物や便や尿を除去しなくてはいけません。ご遺体のお腹などを押して、内容物や排泄物を取り出したり、吸引したりする作業が行われます。

口腔ケアの実施

口臭を抑制するため、ご遺体の口腔ケアも実施されます。顎の硬直が始まる前に、口腔内を歯ブラシやガーゼ、消毒用のアルコールなどで清掃することが一般的です。

清拭の実施

清拭(せいしき)とは、ご遺体の全身を拭き取って綺麗にする儀式です。ご遺体の鼻や耳などにガーゼを詰めて、内容物が出ない処理をすることもあります。

湯灌について

関東圏ではほぼ実施されませんが、死化粧やエンゼルケアの際、湯灌(ゆかん)が実施される場合もあります。

湯灌とは、ご納棺(故人様の身体を棺に納める)の前に行われる儀式です。古くは自宅に大きなたらいを用意して逆さ水(さかさみず)を作り、故人様の身体を洗い清めたといわれています。また、人間が生まれたとき産湯(うぶゆ)へつかるように、こちらの世界(此岸)からあちらの世界(彼岸)へと生まれ変わる産湯(逆さ産湯)だと解釈されることもあるようです。

葬儀は非日常であることから「逆さ事(さかさごと)」と呼ばれています。逆さ水とは、水にお湯を足して作ったぬるま湯のことで、湯灌にはこの逆さ水が用いられます。

しかし、自宅で実施することは困難なので、葬儀会社に依頼して古式湯灌や通常湯灌と呼ばれるサービスを受けることが一般的です。

古式湯灌

古式湯灌とは、たらいの代わりに、手桶を使って逆さ水でタオルなどをしめらせ、故人様の身体を拭く儀式です。故人様の生前の痛みや悲しみ、苦しみなどを、ご遺族の手で拭き浄めるという意味が込められています。

普通湯灌

普通湯灌とは、葬儀会社の式場などで介護用のバスタブを用意し、シャワーを使って故人様の身体を洗い清める儀式です。闘病中、お風呂に入れなかった場合には「おじいちゃん、お風呂が大好きだったよね」とおっしゃって、普通湯灌を選ばれるご遺族もいらっしゃいます。

また普通湯灌では、故人様にシャンプーもしてあげられます。普通湯灌も古式湯灌と同じように、衛生のためにお体をきれいにするという目的だけでなく、生前の痛みや悲しみ、苦しみなどの煩悩を洗い流し浄めるという意味を持つ儀式です。

お体の上には大きなタオルを掛けるため、故人様の尊厳が損なわれることはないのでご安心ください。

死装束への着替え

清拭や湯灌を実施した後、清められたお体で、新品の死装束に着替えていただきます。白装束などが用いられることが一般的ですが、近年では故人様が生前身につけていた洋服などに着替えることも増えています。

死装束へ着替える際には、「襟は左前」「帯は縦結び」といったマナーを遵守しなくてはいけません。

白装束について

仏式の葬儀においては、仏衣と呼ばれる白い着物に加え、足袋や脚絆(きゃはん:脛を守るもの)手甲(手の甲を守るもの)、数珠、六文銭、三角頭巾(天冠てんかん)、草履、編み笠、金剛杖(こんごうづえ)の一式を総称して、旅支度と呼びます。

仏教では一部の宗派を除き、亡くなられた方は、7日ごとにさまざまな仏様の下で修行をしながら、四十九日の旅をして仏様になるといわれています。

・初七日:不動明王
・二七日:釈迦如来
・三七日:文殊菩薩
・四七日:普賢菩薩
・五七日:地蔵菩薩
・六七日:弥勒菩薩
・七七日:薬師如来

最初の7日目に執り行うのが初七日法要で、旅が終わる7回目の7日に執り行う儀式が四十九日忌法要です。そのための身支度が、旅支度と呼ばれています。

旅支度の品には、それぞれ意味があります。例えば、六文銭は三途の川の渡し賃を意味し、旅の途中でお世話をしてくれる六地蔵様へのお布施の役割を果たすそうです。この他にも、天冠は旅の35日目に会うといわれる閻魔大王に見せるための通行手形、金剛杖は歩む足元をサポートするための杖ではなく、旅の途中で出会う良くないものを振り払うための品物だといわれています。(諸説あり)

旅支度も逆さ事に該当するため、足元から足袋、脚絆、手甲、六文銭、数珠という順番でつけていきます。故人様の額につけていた三角頭巾(天冠)は、最近はお顔の印象が違って見えてしまうといった理由から、直接額にはつけず、日除け雨除けの編み笠につけることが多いです。

これらはすべて、旅を無事に終え、成仏できますようにという願いのこもった品々だといえるでしょう。そこには「49日間の旅路が、どうか少しでも安らかでありますように」という、ご遺族の願いを込める意味が込められています。白装束・旅支度は、故人様の大切な旅立ちのため、また生前にご縁のあった皆さまとお別れするための正装です。

ただし、浄土真宗においては「生前の行いがどのようなものであっても、亡くなった瞬間にみな等しく阿弥陀如来様が迎えに来てくださり、極楽浄土へ連れて行ってくださる」という教えがあるため、49日間の修行の旅は必要ないといわれています。

神道の葬儀である神葬祭での正装である白装束は、浄衣(じょうえ)と呼ばれています。
神社の神主さんや巫女さんが身に着けている衣服と同じものです。

男性は烏帽子と手元に木杓(もくしゃく)、女性には扇子を添えます。これは古来、天皇が神とされた時代の正装で、朝廷貴族の服装から続いているものです。神式では、亡くなった方の御霊が家の守り神になるといわれているため、浄衣は神様になるための仕度ともいえます。

キリスト教やその他の宗旨の場合は、生前故人様が好きだった洋服や、あるいは正装であるスーツを着せてあげるのもよいでしょう。映画『おくりびと』のように、ときには硬くなった故人様のお体を優しくほぐしながら、納棺師が丁寧に着せ替えを行います。

白装束の詳細については、以下の記事でも解説しているのでご確認ください。

関連記事:白装束(死装束)とは?白い仏衣や左前に着せる意味も紹介

死化粧(ラストメイク)やエンゲルケアの費用相場

死化粧やエンゼルケアの費用相場は、病院や業者によって異なります。そのため、無料~数万円程度と、費用相場の幅は広い点が特徴です。

病院で死化粧やエンゼルケアを行う場合には、3,000~15,000円程度の実費が必要なこともあります。なお、湯灌を実施する場合には、別途10万円程度の費用が必要です。

そのため、死化粧やエンゼルケアを実施する前に、病院や業者のスタッフに確認しておくと安心でしょう。

まとめ

死化粧は、もうご自身で身支度を整えられない故人様に代わって、ご遺族が身支度を整えてさしあげる儀式です。ラストメイクとも呼ばれ、死後の旅支度という意味が込められています。

この世に生を受けてからの幾十年、人生における最後の姿を、後に遺された皆様の記憶に刻まれるお顔立ちを安らかなものにするための儀式です、また、生前にご縁のあった方々に無言の挨拶をするため、ふさわしい装いに整えるという意味もあります。

死化粧は、この世にまだ故人様のお体がある間に実施できる、数少ない儀式のひとつです。

故人様への感謝の気持ちと尊い人生へのねぎらいの気持ちを込めて、また彼岸への旅路における安寧を願い、生涯最後の身支度を整えて差し上げてはいかがでしょうか。

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