白装束(死装束)とは?白い仏衣や左前に着せる意味も紹介

2022.10.04

故人様の葬儀を行う際には、ご遺体に白装束を着せることが一般的です。白装束は着物以外にも白足袋や脚絆など、必要なものがたくさんあります。また、着物は左前に着せなくてはいけません。

今回は白装束が「なぜ白いのか?」という部分を深堀しつつ、左前に着せる意味や必要なものなどを解説します。

白装束(死装束)とは?

白装束とは、仏式における葬儀の際、故人様があの世へ旅立たれるとき身にまとう衣類のことです。

白装束は「死装束(しにしょうぞく)」や「経帷子(きょうかたびら)」などとも呼ばれます。ただし、なお死装束は、亡くなったときに着せる服という意味しかもちません。帷子とは、裏地のない着物のことです。

帷子に故人様が極楽浄土へ行けるよう願いを込めた経文が書かれるようになったことで、経帷子と呼ばれるようになったといわれています。白装束は「玉止めをしない」「返し縫いをしない」など、その仕立ても特徴的です。

しかし昨今では、経文が書かれていることは少なくなり、白い着物を死装束として着せることが多くなりました。

死装束が白い意味

死装束が白い意味は、仏教において白が穢れのない清浄な色という意味を持つためです。白装束には、故人様が清らかな姿で旅立ってほしいという願いが込められています。

また日本では古来より、紅白の組み合わせに特別な意味を見出してきました。例えば、紅白戦や紅白まんじゅうなど、日本には赤と白を組み合わせたものが他にもたくさんあります。

赤に誕生や生の意味が込められている一方、白には死の意味が込められているため、白装束が死装束の意味を持つようになったようです。

白装束(死装束)を故人様に着せるタイミング

白装束を故人様に着せるタイミングは、大きく2回あります。

1つ目は、葬儀の前に故人様のご遺体を棺へ納める納棺の前です。納棺は一般的に葬儀会社のスタッフが行います。

もう1つは、湯灌の後です。湯灌とは故人様がお亡くなりになった後、ご遺体をきれいにする儀式で、最後に白装束を着せる場合があります。

なお、湯灌については以下の記事で詳しく詳細しているのあわせてご確認ください。

関連記事:「湯灌の目的とは?歴史や費用などについても紹介」

白装束(死装束)を左前で着せる意味

故人様に白装束を着せる際は、左前に着せるのがマナーです。なぜ白装束を左前で着せなくてはいけないのか、その理由を解説します。

逆さ事を意味するため

白装束を左前に着せる理由は、逆さ事を意味するためです。

着物の合わせを「左前」とし、生きている方のお着物の合わせ目と逆にします。これを「逆さ事」と呼び、故人様に違和感を与えることによって、亡くなったことに気づいてもらい、極楽浄土へ旅立っていただくという願いが込められているそうです。

仏教において亡くなった方は、旅をしながら次に生まれ変わる世界へ向かうと考えられています。また死者を穢れ(けがれ)として畏れ、二度と不幸が訪れるのを避ける意味で、常態とは正反対の行為に至ったことが、いつの間にか定着したという説もあるようです。

逆さ事の事例は、他にもたくさんあります。

・逆さ水:ぬるま湯のこと。冷たい水に温かいお湯を足して作る
・逆さ屏風:故人様の枕元に、屏風を飾る風習のある地域がある。ただし、屏風は絵柄をあえて日常とは逆さにして飾る

死後は三途の川を渡っていく険しい道のりになるため、故人様が無事に乗り越えられるよう、残されたご家族が旅支度をして送りだすのです。

ただし、仏教の中でも浄土真宗は、白装束を「右前」で着せるため注意しましょう。

高貴な方と同じ着せ方にするという諸説があるため

故人様に白装束を着せる理由には、高貴な方と同じ着せ方にするという説もあります。

例えば奈良時代には、上級階級の人々は着物を左前で着ていたそうです。また、お釈迦様が亡くなる際、着物を左前に着ていたという説もあります。

あの世で故人様が高貴な方々と同様、暮らしに困らないようにというご遺族の想いが、白装束に込められているのでしょう。

白装束(死装束)で準備すべきもの

故人様に白装束を着せる際には、着物以外にもさまざまなものが必要です。その一つひとつに意味があり、故人様がつつがなく旅をできるようにという願いが込められています。

白い経帷子

死装束としての着物は、白い経帷子の着物です。巡礼者や修行僧が旅立つ際、着物を身につけていたことに倣っています。なお、故人様を白装束に着替えさせるのは、葬儀会社のスタッフや納棺士によって行われることが一般的です。

白足袋・わらじ

白足袋は靴下、わらじは靴の役割を持ちます。故人様が快適に長旅をできるよう、足もとの身支度もしっかりしてから送り出しましょう。

足袋を履かせるときは、必ず白い足袋を左右逆にして履かせます。これも逆さ事のひとつです。足袋には紐がついており、結び方は縦結び(たてむすび)で行い、しっかりほどけないように結ぶことが大切です。

脚絆

脚絆(きゃはん)とは、故人様のひざを保護するものです。長距離を歩くとき、昔の人はひざに脚絆をつけて足を守っていました。無事に歩いて来世へたどり着けるよう、故人様の足にも脚絆をつけて保護します。

手甲

手甲(てっこう)は、手の甲や手首を守るためのものです。昔は武具の一部で、刀から手を守るために手甲をつけていました。故人様には布製の手甲をつけ、旅の中で日よけや汗をぬぐうために使います。

頭陀袋・六文銭

頭陀袋(ずたぶくろ)は、旅の道具を入れるかばんです。頭陀袋の中には、三途の川の渡し賃や六地蔵へのお賽銭だといわれる六文銭を入れます。しかし現代は、六文銭を用意するのは困難なため、六文銭を印刷した紙で代用することが多いです。

数珠

数珠は手にしているだけで煩悩を消滅させ、功徳が得られるといわれています。生前使用していたものがあれば、故人様に持たせることも可能です。ただし、物や素材によっては火葬できないものもあるので、葬儀会社の担当者に確認しておくと安心でしょう。

亡くなった方は来世へ歩いて向かうため、「倒れずにたどり着ける」ことを願い、杖を棺の中に納めます。一般的には葬儀会社が準備したものを利用しますが、故人様の愛用品がある場合は、そちらを納めることも可能です。

ただし、燃えにくい素材を使用している場合もあるため、こちらも数珠と同じく確認しておかなくてはいけません。

また、杖には旅の妨げとなる魔物を振り払う意味があるともいわれています。堅固であらゆるものを打ち砕くところから「金剛杖(こんごうづえ)」とも呼ばれるそうです。

編み笠

日よけと雨よけの役割がある編み笠も、棺に納めることが必要です。編み笠は故人様の頭に被せるのではなく、旅の道具として棺の中へ納めます。

天冠

天冠(てんかん)とは、故人様の頭につける三角形の布のことです。「高貴な人がかぶる冠をつけてあげたい」「顔を隠してあげたい」など、天冠を納める由来は諸説ありますが、極楽浄土へ快く迎えられるための印という意味合いが強いでしょう。

しかし、近年は「死の印象が強い」「故人様のお顔が見えにくい」「顔の印象が変わってしまう」といった理由から、頭にはつけず編み笠につけて棺へ入れることが多いです。

他の宗教や無宗教の白装束(死装束)

仏教以外の宗教における白装束(死装束)と、無宗教の場合はどうするべきかを解説します。

キリスト教の白装束(死装束)

キリスト教には、仏教や神道のように決まった死装束はありません。一般的には、故人様が好きだった洋服やスーツ、ドレスなどを死装束として用意するケースが多いです。

またカトリックの場合は、手元は木製のロザリオ(十字架)を添える場合があります。

神道の白装束(死装束)

神道の葬儀ででは、故人様に「神衣(しんい、かむい)」を着せます。イメージとしては、神社にお勤めされている神職の方々の姿に近いでしょう。

神道では、男性と女性で死装束が異なります。

男性は、平安時代以降の公家の普段着である狩衣(かりぎぬ)を着用し、烏帽子(えぼし)、笏(しゃく)を持たせるのが一般的です。女性には、貴族の中でも特に高貴な方が着る小袿(こうちぎ)のような白い衣装を着せ、扇を持たせます。

無宗教の白装束(死装束)

無宗教の場合は、決まった装いがないので自由度も高く、ご家族の意向に合わせたり故人様が愛用していた衣服などを着せたりするケースが多いです。

ただし無宗教の方に、仏衣を着せても構いません。特に希望がない場合や悩んでしまう場合は、白装束を着せることも可能なので、葬儀会社のスタッフに相談しましょう。

まとめ

白装束(死装束)は、故人様が着る最期のお召し物です。昔から仏教の教え通り、さまざまな故人様への想いや願いが込められています。

宗派に合わせた装いや故人様が生前好きだったスーツや洋服など、死装束にはさまざまなスタイルがあり、好きなものを選択することが可能です。葬儀会社によっては、白い着物だけでなくカラフルなもの、棺とデザインが同じもの、エンディングドレスと呼ばれる故人様用のドレスなどもあります。故人様やご遺族の希望に沿った形で、最適なものを選ぶのがよいでしょう。

なお、白装束の疑問や選び方などについては、お葬式の杉浦本店へお気軽にご相談ください。

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