在宅で最期を迎える自宅見取りの準備や手順とは?

2022.08.16

「病気や障がいがあっても住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」と望まれる方が増えています。

しかし、自宅看取りは医療体制を整えることが難しく、精神的にも肉体的にも介護する側の負担が大きくなることが課題です。万が一、ご家族が突然ご自宅で亡くなられた場合、病院とはまったく違う流れになります。

そのため、ご家族の想いに応えられるよう、準備や手順について理解しておかなくてはいけません。そこで今回は、在宅介護を行う方に向けて、自宅看取りの流れや注意点について解説します。

自宅看取りに必要な準備と心構え

自宅看取りを実現するためには、準備と介護するご家族の心構えが必要です。最低限押さえておきたい準備や心構えについて解説します。

要介護認定の再審査を実施

ご家族の死期が近づいたときに要介護認定の再審査を受け介護度が上がると、社会資源を有効活用できます。自宅看取りを行う場合には、24時間365日の介護が必要になるため、身体的、精神的な負担はもちろん、金銭的な負担も大きな課題です。

要介護度が上がると、至急される保険の限度額も高くなります。社会資源を有効活用することによって、ご家族の負担を抑えられるでしょう。ただし、要介護認定は申請から審査結果が出るまでに半年程度必要なため、早めの申請が必要です。

プロの力を借りる

ご家族だけで介護を行うのは大変なので、プロのサポートを導入することも視野に入れましょう。

自宅看取りを行うまでには、日常的に介護を継続する必要があります。しかし、ご家族の方にも仕事や予定もあるので、常に介護だけを行うわけにはいきません。そのため、ご家族の負担を軽減するために、訪問介護の利用がおすすめです。

訪問介護を利用することによって、日常生活におけるケアだけでなく、医療的なアプローチによるケアも期待できます。また、介護をするご家族の精神的なフォローもしてくれるので、ぜひ有効活用したいところでしょう。

訪問介護を依頼する場合は、ケアマネージャーやかかりつけ医などへ相談することが一般的です。

一方、自宅看取りを行うためには、在宅介護に対応できるかかりつけ医を探す必要もあります。ご家族の定期健診や診察、また状態が悪化したときの処置や死亡診断書の作成などを行うのが、かかりつけ医の役割です。かかりつけ医は、在宅介護になる前、通っていた病院などで紹介してもらえます。

そして、自宅看取りをするために欠かせない存在がケアマネージャーです。ご家族とかかりつけ医、在宅介護業者とつなげてもらうためには、ケアマネージャーの調整が不可欠でしょう。また、在宅介護のケアプランの作成もしてもらえるため、自宅看取りをしようと思ったときには、まずケアマネージャーを探すことからスタートしましょう。

意思表示を確認しておくこと

自宅看取りで大切なのは、本人と家族が「自宅での最期」について話し合い、お互いに理解することです。本人がそれを望んでいることはもちろん、負担が大きくなる家族全員の同意を得ることが、自宅看取りを実現するためには非常に重要なポイントです。

具体的には、自宅での医療や介護体制、本人のおかれている病態、今後の病状変化についてしっかりと把握しておく必要があります。そのためには、ご本人がどこで最期を迎えたいか、エンディングノートなどに記してもらい、ご家族やご遺族と合意をとっておくことも必要です。

死亡前に起こりえる状態について把握しておく

自宅看取りを行う際には、ご家族に起こりうる代表的な病状変化について把握おく必要があります。代表的な死亡前に起こりえる状態変化は、以下の通りです。

・呼びかけへの反応の低下
・呼びかけで目が合わなくなる
・顔色や手足の蒼白(白くなる、青紫色になる)
・手足の冷感(冷え)
・血圧低下(普段の血圧測定値の認知が必要)
・手足の湿潤(汗をかく、湿ってくる)
・呼吸状態の変化(普段の呼吸と違う※死戦期呼吸)
失禁、失便
※死戦期呼吸とは、口をパクパクし、あごをしゃくりあげるような途切れ途切れに起こる呼吸です。

上記のような状態変化がある場合は、最期が近い状態です。すぐに担当の医師に連絡し、後悔のないように寄り添ってください。

救急車を呼ぶ必要性について

自宅看取りの際、悩まれる方が多いのは、救急車を呼ぶかどうかという問題です。

自宅看取りを希望されている方のほとんどが「最期まで苦しんでほしくない」「人工呼吸器や点滴で無理やり生かされたくない」というご本人やご家族の想いから、延命治療を希望されません。

自宅看取りを予定していたものの、終末期患者さんの急変時に慌てたご家族やご近所の方が119番し、救急隊による心肺蘇生が開始されたという話がまれにあります。119番への連絡という行為は「心肺停止であれば蘇生処置を開始してください」という意思表示と捉えられることが一般的です。

救急車の要請をしても自宅で明らかに死亡していると確認できる場合には、救急隊員が病院には搬送しないと判断し、警察に連絡されることがあります。なぜなら、救急車は急病人を搬送するためのもので、基本的にご遺体は搬送しないことになっているからです。

また、救急隊は「死亡直後で温かい」「死後硬直の確認が取れない」など、明らかな死亡の確認が取れない限り、いくら延命を希望していないことを伝えても心肺蘇生法を行わなければならず、ご本人やご家族の意思が通らないケースがあります。

明らかに死亡していると思われる場合には、警察が介入し事件性の有無を確認するために、医師が派遣され検死が行われることになるでしょう。救急車で病院に運ばれたとしても、病院に到着した段階で死亡であると医師に判断されれば、死亡診断書を書いてもらえず、警察へ連絡することになります。

したがって、後から「こんなはずではなかった……」という事態にならないよう、しっかりと自宅看取りに対するご本人の意思とご家族の認知が必要です。かかりつけ医に事前の連絡手段と起こりえる病状変化への対応について、よく話を聞いておきましょう。

もちろん救急車を呼ぶことは、間違いではありません。かかりつけ医がいない場合や担当医への連絡がつかないとき、また判断に迷うときは救急車を呼ぶことが基本です。

自宅看取りのメリット・デメリット

自宅看取りを検討する場合は、メリット・デメリットを鑑みたうえで判断しなくてはいけません。ご本人とご家族でメリット・デメリットの内容を確認し、整理しておきましょう。

在宅で看取りをするメリット

自宅看取りのメリットは、なんといってもご本人に満足してもらえることでしょう。

人生最期のときを迎えるにあたり、自分の好きなことがしやすい環境で過ごせるのは、何物にも代えられない幸せといえます。例えば、病院や介護施設は制限が多いため、食事や行動に大きな制約があるので、ご本人の好きなようには行動できません。

しかし、在宅介護であれば、ご本人が最後の時間をご家族と一緒に、好きなことをしながら生きやすくなります。また、在宅看取りは病院で最期を迎える場合に比べ、経済的な負担が軽くなる点もメリットだといえるでしょう。

在宅で看取りをするデリット

自宅看取りをする場合、最大のデメリットは介護を行うご家族の負担が大きいことです。

24時間365日介護が必要で、この先いつまで続くのかもわかりません。そのため、体力的にはもちろん、精神的な負担もかなりのものになります。また、介護の技術を持たないご家族の場合、不適切な処置により病状が悪化するリスクもあるでしょう。

一方、介護される側の本人も、ご家族に気を遣ってしまうため、言いたいことが言えなくなる可能性も否定できません。

在宅で臨終を迎えたときの対応手順

ご家族の自宅看取りを行った後は、短時間でさまざまな対応を行わなくてはいけません。在宅でご家族が臨終を迎えたときのおおまかな対応手順を解説します。

かかりつけ医に連絡(臨終時ご自宅に不在の場合)

ご家族がご自宅でお亡くなりになったときは、すぐにかかりつけ医へ連絡をしましょう。医師による死亡確認と死亡診断書の交付が行われます。医師が死に際に間に合わないこともあるため、その場合は死亡時刻をメモしておいてください。

かかりつけ医や訪問看護師がいる場合は、必要に応じてエンゼルケアと呼ばれる、お身体の清拭やお着替え、お化粧などが施されます。ご家族も訪問看護師と一緒にお身体を拭いたり、女性であれば使用していた化粧品などを用いてメイクをしたりする方もいます。そのため、事前に思い入れのあるお洋服や化粧品などを準備しておくのがおすすめです。

医師による死亡診断書の発行

かかりつけ医に連絡をすると死因の特定を行います。病死や自然死であると判断をしたら、死亡診断書が交付されるので大切に保管しておきましょう。

法的書類となる「死亡診断書」もしくは「死体検案書」がなければ、故人様の死亡が認められず、法的にはまだ存命だと判断されます。したがって、それらがないと火葬も埋葬もできませんので注意が必要です。また、名前や生年月日に間違いがないかも確認しておきましょう。

なお、ご自宅で亡くなられた場合には、事件性を疑われてしまうことがあります。そのため、ご自宅で亡くなられた場合は、医師や警察が来るまでご遺体には触れないようにしましょう。

死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなくてはならないと法律で決まっています。死亡診断書(死体検案書)を受け取ったら、速やかに必要な項目に記載しましょう。死亡届には届出人が記載する項目がありますが、届出人は誰でもよいわけではなく、ご親族や同居人、家主など、対象が決まっています。(詳しくは以下法務省のHPをご確認ください)

死亡届は死亡地、本籍地、または届出人の所在地にある市区町村役場へ提出しましょう。ただし、届出人になれる方には決まりがありますが、死亡届の提出は誰でも行えます。よって、ご家族の代わりに葬儀会社が提出を代行できますので、お気軽にご相談ください。

参考:法務省/死亡届

葬儀会社へ連絡

医師に死亡診断書を発行してもらったら、すぐに葬儀会社へ連絡し、葬儀の日程を決めます。慌てて準備することがないよう、ご家族間で前もって話し合っておくとよいでしょう。

また、ご家族の死に直面し、精神的な動揺もありながら短期間で葬儀会社を決めなければならないため、比較検討することが難しい状況になります。そのため、ご遺族が満足できないプランや高額なプランを提案してくる葬儀会社と、つい契約してしまうケースもあるでしょう。

そのような事態を回避するためにも、いざというときに余裕をもって準備ができるよう、事前に葬儀会社を決めておくのがおすすめです。

なお、葬儀の準備については、以下の記事も併せてご確認ください。

関連記事:葬儀の事前準備における3つのポイントとメリットを紹介

ご遺体の安置

葬儀会社へ連絡をした後は、故人様のご遺体をどこに安置する場所を決めなくてはいけません。ご親族の希望によっては、ご遺体をご自宅や安置施設に安置することもできます。葬儀会社との打ち合わせの際に、希望を伝えておきましょう。

ただし、ご自宅に安置する場合には注意が必要です。ご遺体の腐食を遅らせるためにドライアイスを使用することや、お部屋の温度を低く保たなくてはいけません。

春夏はエアコンを使用して部屋を涼しくできますが、冬場は暖房器具の使用を控える必要があります。そのため、ご自宅に安置することが難しい場合は、葬儀会社の遺体安置所や民間会社の遺体安置所などに依頼したほうがよいでしょう。

安置施設を利用する場合、葬儀会社によっては多額の費用が発生するケースもあるため、事前に調べておくことをおすすめします。

葬儀会社と打ち合わせ

ご家族の誰が喪主・施主を担当するか、葬儀の形式や参列者の人数、全体的な予算などについて話し合います。葬儀会社と日程や内容を調整し、職場や学校、近隣の関係者への連絡も行いましょう。

死亡届の手続きや供物の手配などは、葬儀会社に依頼すれば引き受けてもらえます。喪服の準備を忘れないようにしましょう。また、遺影のお写真や手続きに必要な印鑑の準備も必要です。

お通夜、葬儀・告別式の実施

葬儀の1日目に行われるお通夜は、多くの方が参列する儀式です。近年は、夕方6時〜7時頃からはじまり、ご親族だけでなく、故人様と縁のあった方々が集まって弔いをします。

参列しやすい時間帯であることから、葬儀・告別式よりも参列者が多くなることが多いです。

一方、故人様と最後のお別れをする場が葬儀・告別式です。仏式の場合、読経の中で宗教者が引導を渡すことで、故人様は現世に別れを告げ、迷いなく仏様のもとへ導かれます(宗旨・宗派により異なります)。

参列者は焼香と合掌を行い、故人との最後の別れをします。

火葬

火葬場では、僧侶や葬儀会社の案内に従って、最後のお別れをします。火葬に必要な時間は1時間程度です。

火葬が終了した後の骨上げでは、喪主から血縁の深い順番に2人1組で同じ遺骨を挟んで拾い、足先から順に骨壺に納めていきます。地域によって風習が異なるため、きちんと確認しておきましょう。

なお、お骨上げについては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

関連記事:火葬時のお骨上げのマナーとは?地域によって異なる場合も

まとめ

「最期は自宅で」「家族に見守られながら最期を迎えたい」と考え、在宅診療を希望される方が増えています。しかし、自宅看取りは、病態変化時の対応、寄り添うご家族の体力や人手の確保など、条件のクリアと継続が必要です。

しっかり家族で話し合い、後悔のない判断ができるようにしましょう。自宅看取までにご家族ができることは限られていますが、できることをするだけでも、ご本人もご家族の満足につながる可能性があるでしょう。

ご家族が亡くなる前に葬儀について考えるのはつらいと思いますが、そのときが近づいてきたら、同時に葬儀の準備も行っておくことをおすすめします。事前に準備をしておけば、看取った後、落ち着いて葬儀を行うことが可能です。

また、事前に葬儀の準備をすることで、看取りの覚悟ができることもあります。社杉浦本店では、その人らしい葬儀を執り行えるよう、故人様やご家族に寄り添った、想いを形にする葬儀を提供いたします。

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