火葬場職員の火夫とはどんな職種?就業形態や年収も紹介

2022.08.15

火葬場職員を見かけることは、一生のうちに何度かしかないことが普通です。そのため、火葬場職員がどのような職種なのかについては、漠然としたイメージしか持たない方が多いでしょう。

火葬場職員と聞いて多くの方がイメージしやすいのが、おそらく火夫だと思います。そこで今回は、火葬場職員の火夫がどのような職種なのか理解するために、就業形態や年収、火葬場が抱える課題などについて確認しておきましょう。

火葬場職員の仕事

火葬場職員と一口にいっても、施設の規模によってさまざまな職種があります。規模が小さい火葬場の場合であれば、火夫だけで切り盛りしているケースもあるでしょう。しかし、規模が大きくなり葬儀会場や精進落としの会場などが設けられている施設においては、事務員や受付印、厨房や給仕スタッフなど、多くの職種の方が働いています。

火夫とは

火夫とは、火葬場で火葬を行う際、炉内の可燃物を観察し、ご遺体が完全に焼けるように火力や風力を適宜調整する職員です。ちなみに、本来の火夫とは、蒸気機関が運転を続けるために必要なボイラーの火を調整する方をさします。

つまり、故人様をこの世からあの世へ送り出すサポートをする、大切な役割を担うのが火夫です。

火夫の仕事内容

火葬以外にも火夫の仕事はたくさんあります。本章では、火夫の仕事内容について確認しておきましょう。

棺の受け入れ

指定された時間に葬儀会社のスタッフが、故人様とご遺族とともに火葬場へ来場します。小さな規模の火葬場の場合は、火夫がご遺族と故人様を告別室、または火葬炉がある場所へ案内することが一般的です。(規模が大きい場合は、別のスタッフが行います)

なお、受け入れの時間は、9時〜14時(冬場は9時〜15時30分)とされています。

火葬

火葬炉の着火スイッチを入れて、火葬を開始します。火夫のおもな仕事は、ご遺体の全身が最後まで焼けるように、炉内のノズル(ここから火炎が放射される)を調節することです。

現代においても火葬は、自動化を一切しないまま執り行われています。その理由は、ご遺体のサイズが千差万別だからです。

炉前のお焼香

火葬炉の前で、ご遺族に故人様のご遺体が納められた棺と最後のお焼香をしてもらうように案内します。

整骨

火葬が終わったら、むき出しのご遺骨をきれいに並べます。収骨の前に、火葬によって出た余計な棺の灰や、棺を留めていた釘やハリを取り除いて、きれいな状態に整えることが火夫の仕事です。

収骨(終了)

ご遺族の前で、故人様のご遺骨を骨壷にすべて収める作業をします。このとき、まずご家族が箸で遺骨を拾い、骨壺に収めることがマナーです。その後、火夫さんが残りのご遺骨を「下半身→上半身→頭」の順番ですべて収めます。

また、ご遺族にご遺骨の説明をするのですが、「喉仏」と呼ばれるご遺骨が、実際には首の第二頚椎だということを、このタイミングで知る方も少なくないでしょう。

火夫のやりがいや仕事上の注意点

火夫は特殊な仕事であるため、どのようなやりがいがあるのか気になる方も多いでしょう。また、故人様のご遺体を扱う特性上、仕事で注意しなくてはならない点もあります。本章では、火夫の仕事のやりがいと注意点について解説します。

仕事のやりがい

火夫は、故人様を無事にご自宅へ届けられるよう尽力する大切な仕事であるため、ご家族やご親戚から感謝されることが大きなやりがいといえるでしょう。もちろん、ヒトの死を目前にするため、精神的につらいこともあると思います。

しかし、そのような職場環境においても、ご遺族の悲しみに寄り添ってサポートし、最後のお別れに集中できるようにすることで、自ずと火夫への感謝へとつながることでしょう。

仕事をするときの注意点

現役の火夫に仕事上で注意している点について尋ねたところ、以下のような回答が得られました。

・煙が出ないようにすること
・台車に不完全燃焼物を残さないこと

ご遺体を火葬する際は、近隣の住民に配慮し、できるだけ煙がでないようにこころがけているそうです。また、台車にご遺体の一部が残っていると、異臭の原因になることもあるため、完全燃焼させるように注意しなくてはいけません。ただし、ご遺骨をきれいに残す必要があるため、微妙な調整が必要になります。

ご遺族と対面する時間は収骨も含め20分程度と非常に短いですが、悲しみに寄り添い、気持ちよく送り出してあげることを心がけているそうです。故人様のお見送りのお手伝いをする点は、我々葬儀会社とも同じ心がけといえるでしょう。

もし、少しでも不安なことがあれば、お気軽にご相談いただきたいと思っております。

火葬場職員や火夫になる方法

火葬場の職員や火夫になるためには、火葬場へ就職することがもっとも一般的な方法です。なお、火夫になるために必要な学歴や資格などはありません。

東京都以外の火葬場は官営のところが多いため、市区町村役場の職員として採用されることで、火夫をめざせます。求人媒体やハローワークなどで募集しているケースも多いので、そちらから問い合わせてみるとよいでしょう。

ただし火夫については、ご遺体を火葬する業務を担当する必要があるため、試用期間が設けられていることが一般的です。そのため、適正がない場合は、試用期間中に辞めてしまうケースも散見されます。例えば、火葬中のご遺体を見て食事が喉を通らなくなったり、ご遺体をきれいに焼くために棒で動かす光景から目を背けたりする方は、火夫の適正がないと判断してよいでしょう。

多くの火葬場が1か月程度の試用期間の後、本採用するかどうかを言い渡すようです。しかし、一人前の火夫になるためには、さらに高い技術を身につけなくてはいけません。

ご遺体を綺麗に焼くためには、火加減や火を当てる場所に細心の注意を払う必要があります。火夫が一人前の技術を身に付けるために数年かかるといわれているのは、これが理由です。特に日本の火葬技術は世界的にみてもトップレベルなので、高い技術を身に付けるためには、それなりの時間が必要でしょう。

火夫の就業形態

火夫の就業形態は、正社員や契約社員、派遣やアルバイトなど多種多様です。また、火夫は完全週休2日制で、残業がほとんどないことも特徴といえます。

ただし、募集している火葬場によって諸条件が異なるので、希望の就業形態がある場合は事前に確認しておきましょう。

火夫の年収

火夫の平均月収は25万円~29万円程度なので、年収の相場は300万円~400万円程度といえるでしょう。火夫は資格や学歴不問ですが、特殊な技術が必要な職種のため、火葬場職員の中でも比較的好待遇といえます。

なお、賞与や昇給などについては、火葬場ごとにルールが異なるので注意が必要です。

火葬場の課題

火夫を目指す方は、火葬場が抱える課題についても把握しておく必要があります。また昨今は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)による影響も出ていますので、併せて確認しておきましょう。

需要と供給のアンマッチ

火葬の仕事はオートメーションではないため、回転率が低い点が課題です。その結果、予約困難な状況を作っています。特に冬場は、火葬の予約が取れるまでに1週間程度かかることも普通です。

一方、日本は少子高齢社会に突入し、4人に1人が高齢者となっています。年間死亡者数は約138万人と増加していることが、火葬場が混雑する原因のひとつです。また、都心に人口が集中していることも、火葬場が混雑する原因といえるでしょう。

公営斎場は民営斎場に比べ、非常に安価な点が特徴で、その分人気があり予約を取るのが非常に難しい状況です。つまり、年間死亡者数の増加に加え、安価な葬儀に対するニーズの増加も、斎場が混み合っている原因といえます。

民営斎場は公営に比べて空いてはいるものの、混み合っていることに変わりありません。また、「直葬(通夜葬儀を執り行わず、火葬のみを目的とした葬儀)が増えている=火葬場が混み合っている」と捉えられがちですが、実際は直接的な影響はないそうです。

なお、火葬までの期間が長くなる場合、弊社ではご遺体が傷まないようドライアイスを充ててお休みいただきます。ご自宅でお休みいただくことも、弊社の会館でお休みいただくことも可能です。

会館にご遺体を安置する場合は、面会もできます。故人様との最後の時間をどのように過ごしたいか、できるだけご遺族の意向に沿ってお手伝いをさせていただきたいと思っております。お気軽にご相談ください。

葬儀会社ごとにドライアイスの費用も異なるため、選択時のポイントになると思います。弊社はドライアイス(最短日程分)も、プランに含まれているためご安心ください。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響が出はじめる以前から、首都圏1都3県では、ご家族やご親族、故人様と親しかった方だけが参列する「家族葬」が葬儀の主流となりつつありました。そして、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、その傾向はさらに顕著になっています。

第1回目の緊急事態宣言が発令された当初は、コロナの知見が少なく、感染予防対策についても不確定要素が多い状況でした。そのため、中高など全国一斉休校問題や通勤ラッシュの回避、イベント自粛、不要不急の外出を控えるといった、数々の要請が政府や地方自治体から出されたことは、記憶に新しいところでしょう。人々は得体のしれないウイルスへの恐怖と不安から、一時期ではあるものの通夜葬儀を執り行わず火葬のみを行う火葬式(直葬)を選択することが多くなりました。

現在、横浜市でコロナが原因で亡くなられた方のご遺体の火葬については、横浜市南部斎場(横浜市金沢区みず木町1番地)の規定時間帯でのみ火葬予約ができます。横浜市久保山斎場、横浜市北部斎場、横浜市戸塚斎場での火葬予約、ほかの時間帯での火葬予約は受け付けていません。

なお、透明な非透過性納体袋に収容されている場合、告別室で棺の小窓部分を開けて(棺の蓋は開けられません)、故人様のお顔を見られます。ただし、コロナの感染者数や死亡者数の状況によっては、取扱いが変更となる場合がありますので、葬儀会社へ事前に問い合わせるのがおすすめです。

コロナの火葬枠は、通常の火葬枠とは別に設けられていますが、火葬場の稼働時間は変わりません。つまり、通常枠の一部をコロナ枠としているため、必然的に通常枠が減ってしまうことになります。その結果、火葬場の予約困難な状況を作っていたのではないでしょうか。

弊社ではコロナで亡くなった方のご葬儀も承っております。葬儀についてわからないことがございましたら、24時間365日いつでもお気軽にお問い合わせください。

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コロナ禍の葬儀形態

コロナ禍であっても、感染予防対策を実施することで葬儀を滞りなく行えることが人々に理解されはじめると、家族葬を選ばれるご喪家が増加しはじめ、コロナ以前の状態にまで回復しました。

また、コロナの感染者数が増加するにつれて、参列者をさらにご家族だけに制限して、コロナ以前と同じように家族儀を2日間で営まれるご喪家が増加傾向です。一方、ご親族にご高齢者がいらっしゃる場合は、感染リスクを抑えるためにお通夜を行わず、葬儀・告別式、火葬を1日で行う「1日葬」を選ばれるケースが増えています。

なお、コロナ禍における葬儀形態については、以下の記事でも解説しているので併せてご確認ください。

関連記事:コロナ禍以降の葬儀事情とは?喪主と参列者が知っておくべきマナー

まとめ

日本では、どのような葬儀形態であっても火葬は必ず行います。葬儀会社と同様、昔は差別されることがあった火夫ですが、高齢者社会の現在はもちろん、これから先も無くてはならない職種といえるでしょう。

火夫は精神的にも大変な仕事だと思います。それを支えてくれている火葬場の職員さん方には、感謝のほかありません。表に出ることが少ない火夫の仕事は、我々葬儀会社にとって身近な存在ですが、まだまだ知らないことが沢山あると痛感しました。

これから火夫を目指してみようという方は、本記事の内容を参考にぜひチャレンジしてみてください。