神葬祭とは?葬儀の内容と流れを徹底解説

2023.05.11

神道を信仰する方が亡くなった際には、神葬祭と呼ばれる葬儀が執り行われます。神葬祭は、一般的な仏式の葬儀とは異なり、多くの儀式を行う点が特徴です。そのため、事前に葬儀の内容や流れを把握しておくことによって、万が一の際にも適切に対応できるでしょう。

ここでは、神葬祭がどのようなものなのか、葬儀の愛用と流れを徹底解説します。ぜひ参考にしてみてください。

神葬祭とは

神葬祭とは、日本のもっとも古い宗教である神道の葬儀です。神道の世界では、亡くなった人は神となって子孫を見守ると考えられています。神葬祭は、故人様をその家の守り神とするための儀式という位置付けです。

神葬祭の形式が明確に確立されたのは、明治の初期だといわれていますそれまでの神道の葬儀は、仏式で行うことが是とされていました。たとえ由緒ある神社の宮司の家柄であっても、仏式の葬儀を行い、その後で神道による儀式も行う形式が散見されたそうです。

神葬祭の形式は長い間、地域によって異なることが普通でした。現在のように全国で差異の少ない形式となるのは、廃仏毀釈以後の、国家神道になったことが契機といわれています。

神葬祭の内容と流れ

神葬祭は、通常2日間にわたって執り行う儀式です。儀式の前後には帰幽報告、枕直し、帰家祭、十日祭など多数の斎事があります。ただし今日では、省略されるご家庭も増加傾向です。

神葬祭では、故人様の魂のあり方を大切にしています。そのため、魂が今どこにあるかを定めていくことも、神葬祭を執り行う目的の1つです。

神葬祭の1日目に執り行われる通夜祭は、正式には遷霊祭と呼ばれます。神道には、逝去されたご遺体から魂が遊離され、隠れてしまうという考え方があるためです。

隠れた魂がどこに行ったのか分からないため、目に見えない幽世(かくりよ)の世界に帰ったものと考えることから帰幽と呼ばれています。儀式を行うに際し、ご家族やご親族の元に来なければならないため、葬場祭の前日に遷霊祭と呼ばれる、魂を霊璽へ遷移する儀式を行うのが習わしです。

神葬祭の2日目は葬場祭で、本葬とも呼ばれます。前日に迎えた御霊が、一晩鎮まった後、これから家の護り神として永遠に鎮まる故人様を偲ぶ儀式です。

このように、神葬祭では多くの祭儀が執り行われます。地域ごとの慣習によって異なる部分もありますが、ここでは一般的な神葬祭の流れと内容をご紹介します。

逝去当日の流れ

ご家族が亡くなった当日も、いくつかの儀式が執り行われます。依拠当日に実施される儀式の流れを確認しておきましょう。

●帰幽奏上(きゆそうじょう)

産土(うぶすな)、氏神(うじがみ)、または特別な信仰を持っている神社へ、ご家族が逝去した旨を伝える儀式が帰幽奏上です。神道では、人が死去したことを「帰幽」と呼び、そのことを神様や先祖に報告することを「帰幽奉告」と呼びます。

帰幽奉告の儀式の中で、神職が神様や先祖に対して、故人様の死を奏上するのが帰幽奏上です。

●神棚封じ

自宅の神棚にご家族がなくなった旨を報告し、半紙や白い紙を貼り神棚の扉を閉じて封じる儀式が神棚封じです。忌中の間は神棚を封じ、忌明けになったら紙をはがして、それまで慎んでいた神棚のお祀りを再開します。神棚封じ中は神饌、榊などは下げ、拝礼などは行わず、故人様の哀悼に専念することが習わしです。

神棚封じについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

関連記事:神棚とは?神棚封じの目的や手順確認しておこう(今月納品した別記事への内部リンクを設置してください)

●枕直し

故人様の身体を清め、顔に白布を置き、頭を北向きにして安置する儀式が枕直しです。枕元に守り刀の刃を逆方向に向けて置き、故人様のプライバシーを守るために屏風を立てます。また、小案(膳などの高足の机など)に米や酒、または故人様が好きだった食べ物などを供えることも多いようです。なお、ご遺体をご自宅に安置することが難しい家庭も増えており、葬儀会社に安置することが一般的になっています。

●地鎮祭

昨今では行うことの方が少ないですが、墓所を鎮める祭典を行い、人夫に墓穴を掘り始めてもらう儀式が地鎮祭です。ただし、明治期の土葬が制限されてからは行われることはほとんどありません。

●納棺

ご遺体を棺に納めます。昔の日本家屋では殯室を用意し(亡くなられた方用の部屋客間等常に使わない場所、または納屋などを整えるか、新たに小屋を設ける)、枕直しを行います。入棺に際して、改めて表座敷へ移動して棺前を装飾し、饌を備える流れです。

今日では、自宅で殯室を用意することは難しいので、普段のお休みの場所で納棺となるか、温度調節の可能なエアコンのある部屋をご案内することが多いようです。

神葬祭(1日目):通夜祭

神葬祭の1日目は通夜祭が執り行われます。通夜祭は、神式で行われるお通夜のことです。また、通夜祭は「遷霊祭」と呼ばれることもあります。葬儀前日に、故人様の御霊に対し招魂を行う儀式です。

式次第は地域によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

・喪主、ご遺族の着席:喪主・ご遺族、ご親戚、来賓、参列者が着席

・斎主以下斎員参進:通夜祭・葬儀を司る神職である斎主が着席し、続いて副斎主、斎員(神職の補佐)が着席

・開式:進行役が「ただいまより故○○様の葬場祭を執り行います」と開式を述べる

・修祓(しゅばつ):祭場、参列者、供物などを祓い清める。お祓いを受けるとき、参列者は頭を下げてこれを受けるのが習わし

・斎主一拝(さいしゅいっぱい):斎主が祭壇正面に進み出て一礼し、参列者も斎主に習って拝礼

・遷霊詞奏上:斎主が遷霊の詞を奏上

・遷霊の儀(せんれいのぎ):霊魂を霊璽(みたましろ)に留める儀式

・霊璽安置(みたましろあんち):霊魂が遷った霊璽を祭壇に安置

・献饌(けんせん):祭員が饌を供す儀式。饌とは供物のことで、米、酒、塩、水餅、卵、魚、野菜、果物、菓子などが一般的

・霊魂安定詞奏上(れいこんあんていしそうじょう):祝詞の1つ。霊を白木の御霊代に遷した後、故人様の安寧を祈る祝詞を奏上する儀式

・遷霊詞奏上:霊を白木の御霊代に移す際、神職が故人様の霊が安らかに移るように祈る祝詞を奏上する儀式。遷霊詞奏上の間は、部屋の明かりが消されます

・通夜祭詞奏上(つうやさいしそうじょう):齋主が故人様を偲ぶ祭詞の奏上を行う儀式

・撤饌(てつせん):祭員が饌を撤する儀式

・玉串拝礼(もしゅさんれつしゃたまぐしはいれい):喪主、ご遺族、ご親戚、来賓、会葬者の順番で、玉串をささげる。玉串を奉じてから祭壇に向かって拝礼を行い、拍手は二礼二拍手一礼の「しのび手」で行うのが一般的

・斎主一拝(さいしゅいっぱい):斎主が拝礼し、全員が喪主に習って拝礼

・斎主斎員退下(さいしゅさいいんたいげ):斎主と斎員が神前から退く

・閉式

神葬祭(2日目):葬場祭

神葬祭の2日目は、葬場祭と呼ばれる仏式の葬儀・告別式に該当する儀式を中心に、5つの儀式が執り行われます。

・発柩祭
・葬場祭
・火葬祭
・埋葬祭
・帰家祭

ここでは、それぞれの儀式の内容と流れをご紹介します。

●発柩祭(はっきゅうさい)

発柩祭とは、神葬祭で葬場祭に先立ちご自宅を出棺し、葬場へ向かう際に営まれる儀式です。ご遺族や参列者は、故人様の霊を送り出すために、棺に白い布をかけて担ぎ出します。斎主が祝詞を奏上し、ご遺族が釘打ちを行うのが一般的です。喪主、またはご親族の代表がお礼の挨拶をします。

なお、発柩祭は地域性が出る儀式です。例えば首都圏においては、省略し霊柩車の後方を祓うケースがほとんどです。柩を霊柩車に納めた後、霊柩車後方に案を設け、神饌を供じ、斎主が発柩祭詞を奏上した後、車両を祓い清めたのち、全員で玉串拝礼を行います。

●葬場祭 本葬

葬場祭は本葬とも呼ばれる、故人様の霊を天へ送る儀式です。故人様の生前の遺徳を称え、家の守り神として向け入れます。近年は、葬場祭に十日祭や帰家祭を組み込んで行うことも増えているようです。

葬場祭の一般的な流れは、以下の通りです。

・参列者着席

・斎主斎員参進

・開式

・修祓

・斎主一拝

・献饌

・葬場祭詞奏上(そうじょうさいしそうじょう):齋主が祭詞を奏上する儀式。祭詞には故人様の略歴や人柄などが盛り込まれ、遺徳を称え偲びます。奏上中は列席者全員が低頭

・弔辞奏上(ちょうじそうじょう)

・弔電奉読(ちょうでんほうどく)

・喪主参列者玉串拝礼

・撤饌

・斎主一拝

・斎主斎員退下

・閉式

なお、神社や斎場によっては、一部の儀式の順序や内容が異なる場合があります。例えば、弔電奉読は弔辞奏上の前に行われることも多いです。また、喪主参列者玉串拝礼は、献饌の後に行われることもあります。そのため、事前に神社や斎場に事前確認しておくと安心です。

●火葬祭

故人様の霊を火に委ねる儀式が火葬祭です。ご遺族や参列者は、故人様の霊を送り出すために、棺に白い布をかけて担ぎ出します。火葬場では、斎主が祝詞を奏上し、ご遺族や参列者が棺に線香を手向けるのが一般的な流れです。

火葬祭の多くは、火葬場で棺が火葬炉へ進んだ後、実施されます。本来は棺に対し薪組を行った後、火葬祭を行い、後に松明で火入れを行うのが正しい進行です。しかし近年、火葬場の整備により、火葬炉に納めた後、火葬炉前で行うことが多くなりました。

火葬式の一般的な流れは、以下の通りです。

・修祓

・火葬斎詞奏上

・会葬者玉串拝礼

式次第は非常に簡素で、玉串も代表者のみの拝礼に会葬者が合わせるケースもあります。

●帰家祭

故人様の霊が、家に帰る儀式が帰家祭です。葬儀を終え自宅に戻った際に行われます。しかし近年は、自宅で行うことはほとんどありません。祭典の片づけを行う際、改めて清祓いを執り行うのが一般的です。

帰家祭では、ご遺族が白木の御霊代を持ち帰り、仮屋に安置します。仮屋とは、故人様の霊が一時的に休む場所です。仮屋には、故人の写真や好物などを供えます。

帰家祭の一般的な流れは、以下の通りです。

・一同着席

・斎主以下斎員着席

・開式

・清祓(きよはらい):葬儀を終えて最初の霊祭にあたり祭場、参列者、供物などを祓い清める儀式

・大祓詞奏上(おおはらいしそうじょう):神道の祭祀に用いられる祝詞の1つである大祓詞を唱える儀式。大祓詞は、罪や穢れを祓うために毎年6月と12月の末日に行われる大祓で奏上されるもので、中臣氏が担当していたことから中臣祓とも呼ばれ、浄化や清めの効果があるいわれている。大祓詞奏上は、神職が行い、斎主以下斎員は神職の唱える大祓詞に合わせて心中で唱和

・斎主一拝(一同々拝)

・献饌

・帰家祭詞奏上(きかさいしそうじょう):齋主が無事に葬儀を終えることができたことを奉告し、初めての霊祭の祭詞を奏上する儀式

・喪主参列者玉串拝礼

・撤饌

・斎主一拝

・閉式

●埋葬祭

故人様のご遺骨を墓地に埋める儀式が埋葬祭です。墓地では、斎主が祝詞を奏上し、ご遺族や参列者がご遺骨を骨壷に納めます。骨壷は、白木の御霊代と一緒に墓穴へ下ろされるのが習わしです。

埋葬に期日はないため、ご家族や神社、墓所と検討を行って日程を定めます。その後、墓所の規定に従い祭典を行います。祭典を行った後、骨壺を収める形と、祭典の途中で納骨してから祭文を奏上し玉串拝礼を行い閉式する形の2種類があるため覚えておきましょう。

神葬祭の終了後

神道の周年祭は10日祭、50日祭、100日祭、1年祭、5年祭、10年祭以下10年ごとに執り行います。10年以後の祀り上げは50年祭、もしくは100年祭をもって執り行うのが一般的です。

祀り上げとは、その祭典を持って個別(その御霊の命日に祭典を行う)に祭典はせず「○○家の先祖代々の御霊」という霊璽に合祀し、ご先祖様として敬う祭典です。このとき、故人様の霊璽を、お焚き上げすることが習わしといわれています。

10日祭は、帰家祭を葬場祭に組み込んで行うケースも増えています。ただし、お願いした神社によっては、対応が難しいこともあるようです。50日祭までは忌中の期間として、柏手は偲手と呼ばれる音を出さない柏手で行います。なお、100日祭は行わないことが多いです。

周年祭は、ご自宅の祖霊舎(先祖の御霊を祀る神棚)の前で行うことが多いですが、居間などに祭壇を組むことや、葬儀会社、または公民館、墓所の祭典場、ホテルなどを借りて行うこともあります。

神葬祭のマナー

神葬祭に参列する際には、玉串料を持参する必要があります。玉串料は、神職に対する感謝の気持ちを表すもので、一般的には3,000円から5,000円程度が相場です。

また玉串を奉奠する際には、神職から受け取り、胸の高さに持ち上げて祭壇に向かって一礼し、根元が地面に向くように持ち直して祈念します。その後、玉串を玉串案に立てかけて一礼し、神職に返すのがマナーです。

神葬祭においてご遺族にお悔やみを述べる場合は、玉串を奉奠した後、ご遺族に一礼してお悔やみの言葉をかけます。適切な言葉は「ご愁傷さまでございます」「心よりお悔やみ申し上げます」などです。

まとめ

神葬祭とは故人様との別れであるとともに、新たなる形で共に生きるための儀式です。これまで一緒に生きてきたご家族と、新しい未来を過ごすための儀式が神道の葬儀といえるでしょう。故人様の身体は見えなくなりますが、魂は永遠に遺るため、ご家族はもちろん、その子々孫々までも見守ってもらえるでしょう。

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