樹木葬とは?メリット・デメリットや費用感などを紹介

2022.10.05

近年は、ライフプランに応じて、さまざまなお墓を選択できます。お寺や霊園などの従来型一般墓をはじめ、お墓を承継する必要がない永代供養墓や駅近で室内型のため雨でもお参りできる納骨堂、海洋散骨、手元供養など、さまざまな種類のお墓を選ぶことが可能です。

その中で、最近注目を集めているお墓のひとつが樹木葬でしょう。しかし、樹木葬といわれても、どのようなお墓なのか知らない方は多いと思います。

そこで今回は、樹木葬がどのようなお墓なのか、メリット・デメリットや費用感などについて解説します。

樹木葬とは

樹木葬儀とは、墓石の代わりに樹木を用いたり、納骨する場所の周りに草花を植えたりするお墓です。最近は、樹木葬という言葉をよく耳にするようになったと思いますが、「自然志向」「自由で明るい」といった印象を持つことでしょう。

日本ではじめて樹木葬を始めたのは、岩手県にある臨済宗のお寺である祥雲寺です。1991年にスタートしてから、現在では多様性のある樹木葬が年々増え続けています。

樹木葬の特徴は、お墓を子供世代に引き継ぐ必要のない永代供養であることです。また、お寺の墓地内にあっても、その多くが宗教・宗派自由とされています。

近年、樹木葬が注目を集めてきた背景には、少子高齢化によるお墓の承継問題があります。これに加え、首都圏の墓地不足も考えられるでしょう。墓地の承継者が必要なく、限られた面積の中にたくさんのお骨を埋葬できる樹木葬は、2つの課題を同時に解消するための方法として脚光を浴びました。

樹木葬の種類

樹木葬は里山型タイプと都市型タイプ、庭園型タイプの大きく3つに分類されます。それぞれ特徴を確認しておきましょう。

里山タイプ

里山タイプは、樹木葬の原点といわれるものです。里山タイプの樹木葬は、自然にもっとも近い形で埋葬できる方法といえます。里山タイプの樹木葬の多くは、山間部でご遺骨を自然に還す自然葬の形、つまり散骨です。

そのため、里山タイプの樹木葬は、自然志向の方に最適なお墓といえるでしょう。ご遺骨の埋葬場所は、自然の樹木をはじめ、墓標として植樹した木の下や何もない場所など、さまざまな種類があります。

都市タイプ

都市タイプとは、都市部で執り行う樹木葬です。シンボルツリーの周辺に、複数の個別区画を造り、ご遺骨を埋葬します。山間部にある里山型の樹木葬に比べ、交通のアクセスが良い点はメリットとして挙げられます。

都市タイプの樹木葬儀の埋葬方法は、骨壷をそのまま埋葬することが一般的です。ただし、一定期間を過ぎると、合祀墓に移される場合もあります。そのため、土に還るという樹木葬のイメージとは異なるかもしれません。

庭園タイプ

庭園タイプとは、庭園風に花や植物に囲まれた場所にご遺骨を埋葬する樹木葬です。お花が好きな方や、たくさんの花に囲まれて眠りたいという方には、庭園タイプの樹木葬が最適でしょう。

プレート型の石の下にご遺骨を埋葬するため、ご遺骨は自然に還さない場合が多いです。都市タイプと同様、自然にご遺骨を還したい場合は、里山タイプを選ばれたほうがよいでしょう。

オプションでペットと一緒に入れるタイプもあるなど、時代の流れによって、今後も新しい種類の樹木葬が誕生する可能性はあります。樹木葬にはさまざまな種類があるので、家族で打ち合わせをしてから、好みのタイプを見学に行かれるとよいでしょう。

樹木葬のメリットは4つ

樹木葬には4つのメリットがあります。樹木葬の実施を検討している方は、どのようなメリットなのか確認しておきましょう。

1.お墓を継ぐ必要がない

墓地を継いでいく必要がなく、管理の心配がいらないのは樹木葬のメリットです。

一般的なお墓は、代々承継する必要があるため、継いでいく方がいなくなる心配はあります。しかし、樹木葬は墓石を建てないので承継する必要がなく、永代供養と同じように墓地を管理する霊園や墓地の担当者に管理を任せることが可能です。そのため、跡継ぎがいない方でも、管理の心配はありません。

2.一般墓に比べ費用が抑えられる

樹木葬儀は、一般墓に比べ金額が抑えられる点もメリットです。一般墓の場合、永代使用料や墓石代、管理費などがかかり、どうしても費用は高額になります。しかし樹木葬であれば、高額な墓石を新しく購入する場合に比べ、費用を安価に抑えることが可能です。

埋葬する場所やオプションによって費用が高くなる場合もありますが、その点を踏まえても、一般墓より費用を抑えられるでしょう。

3.宗教・宗派の制限なく実施が可能

樹木葬儀には宗教・宗派の制限がなく、誰でも実施できます。樹木葬は「自然に還る」ことがコンセプトなので、宗教・宗派を問わずに埋葬できる場合がほとんどです。

そのため、納骨式や宗教上の儀式などは必要ありません。ただし、寺院墓地にある樹木葬の場合は、檀家になる必要があるかないかを事前に調べておく必要があります。

4.自然志向だった故人様の意思を尊重できる

樹木葬であれば「自然に還してほしい」「樹木や植物に囲まれて眠りたい」「遺族に迷惑をかけたくない」といった、故人様の想いを尊重することが可能です。

最近は一般のお墓でもペットと一緒に入れるところはありますが、樹木葬は特に多いようです。ペットを飼っている方には、非常に魅力的だといえるでしょう。

樹木葬のデメリットは4つ

樹木葬には一般葬とは違ったデメリットがあるため注意は必要です。これらのデメリットも理解したうえで、樹木葬を実施するかどうかを検討しましょう。

1.埋葬するための許可が必要

樹木葬を実施する際には、故人様のご遺骨を埋葬するための許可が必要です。

樹木葬を実施できるのは、管理された敷地だけです。勝手に近くの山林などへご遺骨を埋葬すると、法律違反になります。したがって、一般的な墓地の埋葬方法と同じように、法的に許可を得た場所にだけ埋葬することが可能です。

2.埋葬後にご遺骨を取り出せない場合がある

樹木葬では、埋葬後のご遺骨を取り出せない場合があります。

骨壷を埋葬する場合は別ですが、土に還すことをコンセプトにした樹木葬では、埋葬したご遺骨は基本的に取り出せません。一般のお墓のように、ご遺骨の引っ越しができないことも理解しておきましょう。

3.樹木や植物は枯れることがある

樹木や植物は枯れてしまう可能性があることも、樹木葬のデメリットです。例えば、気候の影響で苗が根付かなかった場合や、台風などの自然災害によって樹木が倒壊してしまうなどの原因が考えられるでしょう。

樹木や花は自然のものなので、杜撰な管理によって枯れてしまう可能性もあります。植物の成長を見ることも樹木葬の楽しみの1つですが、こうした問題が起こりうる可能性も理解しておきましょう。その際、新しい苗木を植えるといった対応をするのか、事前に確認しておくのも大切です。

4.ご親族から理解を得られない可能性がある

樹木葬をまだ詳しく知らない方は多く、抵抗を持つご家族やご親族もたくさんいます。そのため、樹木葬の実施を反対される可能性もあるでしょう。

樹木葬と一般のお墓との違いをご家族やご遺族にきちんと説明して、理解してもらうことが大切です。勝手に進めてしまうと、トラブルの原因になります。

樹木葬の費用相場

樹木葬の費用は、タイプや葬儀会社のプランによっても異なりますが、5~80万円程度が相場といわれています。費用感にかなりの幅があるのは、地域や埋葬方法などに費用に差があるからです。

参考までに、埋葬方法による樹木葬儀の費用相場は以下の通りです。

・合祀埋葬:5~20万円程度
・個別埋葬:15~60万円程度
・家族埋葬:20~80万円程度

一般墓は100~200万円程度が相場のため、樹木葬のほうが費用は安価だといえるでしょう。

まとめ

時代の流れやニーズによって、墓地の形式もさまざまに変化してきました。お寺や霊園にある一般墓をはじめ、永代供養墓、納骨堂、樹木葬、散骨、手元供養など、その種類はさまざまです。ライフスタイルや価値観などによって、ご自身に合った墓地を選択できる時代になっています。

例えば、平成19年に戸塚区にできたメモリアルグリーンは、一般墓がない形式の墓地ということで、販売前から高い注目を集めました。上記のように、樹木葬と芝生型の墓地があります。

芝生型の墓地は、石のプレートを置き、その下にご遺骨を埋葬する形式です。従来のお墓より石の大きさが小さく、費用を抑えられる点がメリットだとえいます。

また、一般墓なしの形式で戸塚区舞岡に建設中の墓地、舞岡墓苑(仮称)が令和8年に完成予定です。ここも樹木葬があり、高い注目を集めています。

本記事で紹介したように、樹木葬にはさまざまなタイプがあり、今後もニーズに合わせた新しいタイプのものが登場することでしょう。どのようなタイプであれ、選択肢の幅が広がるのはよいことです。