疎遠な親族の急な訃報、どう対処する?

2022.10.04

昔は交流があったが今はほとんど顔を合わせることもない、小さい頃に何度か会ったことはあるがあまり関わりがない、存在は認識しているが直接交流がない……など、親類関係があってもほとんど交流のない親族は意外と多いものです。

「長いこと会っていない親族が亡くなったので、引き取ってほしいと知らせを受け驚いた」

「良心ですべてを引き受け、相続もしっかり受けようと動いていたところ、お亡くなりの方に大きな借金があることが判明した」

「自分より近しい近親者が後から現れ、相続だけ貰うと言ってきた」

「生前住んでいた不動産の引き払いや家賃の請求、孤独死だったため特殊清掃のクリーニング費用も求められた」

今回は、さまざまな理由で疎遠になった親族が亡くなり、役所や警察から連絡があった場合の対処方法について調べました。死亡届の提出や相続放棄についても触れていますので、もしものときの参考になさってください。

必ずしもご遺体を引き取る必要はない

首都圏だけでなく、全国において核家族化が進んでいる現代の世の中で、たとえば小さい頃は頻繁にいとこやおじさん・おばさんに会っていたという方も、成人してからは徐々に顔を合わせる頻度も減っているのではないでしょうか。

あまり面識のない親族が病院で亡くなり、引受人がおらず役所から連絡が来たときや、警察からの電話で独居の高齢の身内が亡くなったことを知らされたときなど、急に連絡が来るようなことがあれば誰でもびっくりしてしまいますよね。

なぜ自分に連絡が来たのか?と考える方も少なからずいらっしゃると思います。

はじめにお伝えしておきますが、役所などから連絡が来たからといって、絶対にお亡くなりの方を引き取らなければいけないということはありませんのでご安心ください。

驚かれるかもしれませんが、お亡くなりの方の引き取り連絡を受けた場合は一旦落ち着いて、より近い親族がいないかを冷静に判断することが大切です。

ここではお亡くなりの方を引き取る場合と、引き取らなかった場合の例をお伝えします。

1.そのまま引き取る場合

・あまりお付き合いがあった訳ではないが、誰も引き取らないのは心情的にかわいそう

・金額的に無理がなければ引き受けてもよい

・自分に連絡が来たのは何かの縁だ

・昔はお世話になっていたから

こうした理由から、お亡くなりの方の引き取り・葬儀・埋葬までを引き受けられる場合は、通常通りの方法で葬儀等を執り行うことができます。

ただし、お亡くなりの方に相続が発生する場合は慎重に判断しなければなりません。

引受人になったとしても、お亡くなりの方により近い血縁関係者がご存命の場合は、その血縁関係者が財産を相続する可能性があります。

お金に関することは、おいおいトラブルになる可能性が非常に高いため、二つ返事での引き受けはおすすめしません。

相続の順位

相続には順位があり、そのルールにもとづいて分配する人を決めていきます。

1.お亡くなりの方の配偶者は必ず相続人となりますが、配偶者がいない場合は子供たちで分配します。(第1順位)

2.子供がいなければお亡くなりの方の父母が相続します。(第2順位)

3.父母もいない場合は兄弟姉妹が相続します。(第3順位)

4.第1~第3順位に該当者がいない場合は、相続権を持つ親族がいないため、相続権なしとなります。

訃報を受けて驚きの中、すぐにくわしい親族関係を思い出すことは難しいでしょう。

引き取りの返事は一旦保留にさせてもらい、より近い親族がいないか確認してから決めても遅くはありません。

2.引き取らない場合

役所や警察等からの連絡を受けて、当初は責任感もあり引き受けるつもりだったものの、金銭面やその後の面倒な手続きなどのことを考えた結果、引き取りを拒否することも可能です。

その際に従兄弟以上離れた親類関係でしたら、連絡を拒否し続ければ、基本的に役所が介入して諸々の手続きを行ってくれるケースもあります。

土地や財産など、プラスの相続が発生した場合、そちらの相続も拒否しなければなりません。

死亡届は身内以外も提出できる

お亡くなりの方を火葬・埋葬するためには、火葬許可証が必要です。

火葬許可証を受け取るためには、その方が亡くなった事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は3か月以内)に、死亡届を役所に提出する必要があります。

提出先はお亡くなりの方の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の市役所、区役所、町村役場です。

もし自分がお亡くなりの方を引き取らない場合、死亡届さえも出す人がいないのではないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。

以下の方なら、死亡届の記入・提出を行うことができます。

・配偶者、親族

・同居者

・家主、地主、家屋管理人、土地管理人等

・後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者

夜間や休日に提出する場合は、常駐の警備員さんが受付を行ってくれますが、その場では各役所のデータベースにアクセスできないので後日の交付となります。

もし書類に不備があれば後ほど連絡が来て、内容によってはあらためて窓口に行く必要があります。

なお、申請に費用はかかりません。

相続も放棄する場合

相続は、亡くなった方の一切の財産を引き継ぐことです。

遺産には、預貯金、不動産、株式などのプラスの財産相続が含まれる一方で、借金などのマイナスの財産も含まれます。

つまり財産を相続して借金も相続すると、相続した人が借金を返済する義務が発生するのです。

相続をしたくない場合には放棄することができます。

司法書士や弁護士にお願いするほかにも、自分自身でも手続きができますので、それぞれの方法をみていきましょう。

司法書士に依頼するときの相場

放棄をする方1人につき3~5万円が相場です。

複数人でまとめて依頼する場合、減額してくれるところもあるようです。

弁護士に依頼するときの相場

放棄をする方1人につき5~10万円程度が相場です。

司法書士と同様に、複数人でまとめて依頼する場合には減額に対応してくれるところもあるようです。

また、必要書類の取得も代行してもらう場合、代行手数料がかかる事務所もあります。

自分で行うときの費用

自分で必要な書類を用意して家庭裁判所に提出する場合、かかる費用は3,000円程度です。

●家庭裁判所に自分で相続放棄手続きを行う場合に必要なもの
・収入印紙800円分(1人につき)
・被相続人の住民票除票(300円)
・申述人(放棄をする方)の戸籍謄本(450円)
・被相続人の死亡の記載のある除籍謄本(750円)
・連絡用の郵便切手(おおむね400円~500円)

これは最低限の場合で、父母や兄弟が相続放棄をする場合は、上記のほかにも、被相続人(亡くなった方)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要となるため、もう少し費用が増えるようです。

弁護士や司法書士にお願いすると費用がかかるイメージがあるため、ご自身で手続きをしようと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし相続はトラブルになりやすく、たとえば借金を一人で背負いたくない身内から、放棄をしないように迫られることもあるかもしれません。そういう場合には弁護士に間に入ってもらったほうが良いでしょう。

誰も引き取らない場合、亡くなった方はどうなるの?

相続権のあるご親族がすべて相続を拒否した場合や、誰とも連絡がつかない場合は、お亡くなりの方の住民票上の自治体の費用負担によって葬儀や火葬が執り行われます。

費用については、お亡くなりの方に財産がある場合は、預貯金仮払い制度などを利用することでそこから捻出することもできます。
ご親族の方が葬儀費用を支払えない場合は一旦立て替えておき、後日公的保険から給付される給付金や、故人の生命保険から払う方法が考えられるでしょう。
生活保護受給者の方が亡くなった場合には、葬祭扶助制度の利用も可能です。

また、身寄りのない方のご遺骨は、自治体で一定期間保管した後に合同埋葬されます。
納骨後は、もしご遺族が現れたとしても遺骨を取り出すことはできません。

受け取る・受け取らないにかかわらず手続きはお早めに

引き取りを行うか拒否するかにかかわらず、ご自身に相続が発生すると分かった場合、手続きは早めに行いましょう。

理由としては、葬儀の費用負担の問題のほかにも、生前住んでいた家賃の支払いなど、お亡くなりの方が利用していたすべての費用が相続人には発生するからです。

またお亡くなりの方の遺体引き取り、相続についてのどちらも拒否するという場合は、3か月以内にお亡くなりの方の居住地の家庭裁判所で手続きが必要となります。

お気持ちとしてはいろいろなお考えがあり、なかなか複雑だとは思います。
しかし後々の金銭、親族間での考え方によるトラブルを未然に防ぐことを考えて、手間はかかってしまいますが、遺産相続の手続きはできるだけ早く進めることをおすすめします。

まとめ

今回注目した内容はなかなかシビアな問題ですね。
人の死は急にやってくることですし、金銭的な問題も発生することがあります。
ほとんどの方が、自分自身の気持ちの問題とは別に、実際には「このくらいの費用が必要」と急に言われても、用意できない場合もありますよね。
おいおい考えていくと、親類関係やさまざまなトラブルが発生する可能性も大いにあります。

人が亡くなる状況は十人十色ですので、一概には判断できないことが多く考えられますが、簡単に済まされることではないことは容易に想像できてしまいます。
急な連絡で驚き、困惑、不安な気持ちでいっぱいな時に、あれやこれや考えるのはとても大変だと思います。

自分がこうした連絡を受けたときは、すぐに引き受けずに、落ち着いて判断することが大切です。
また、今度は自分が周りに心配をかけないためにも、自分自身や両親が遺言書を作成しておくのも良い手段になりそうです。
このコラムがお困りの方のお役に立てれば幸いです。