葬儀社のSNS事情

2022.08.16

昨今、SNSを使って情報発信を行っている会社が増えています。
一般サービス業とは違い、クローズドなイメージがある葬祭業ですが、SNSを使った活動を少し探っていきたいと思います。

SNSとは

SNSは、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略で、登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービスのことです。

本コラムでは、葬儀社が発信している情報やイベントなどを中心に、SNSをどのように活用して情報発信しているかをまとめています。
今回はさまざまなSNSコミュニティの中で、知名度の高い「Facebook」「Instagram」「TikTok」、厳密にはSNSとは違う分類ではありますが「YouTube」「Twitter」の、世界を代表する5つのサービスを取り上げました。

1.SNS検索ランキング

まず、情報発信量を調べる手段として「キーワード検索」を使用します。

はたしてどれくらいのページがヒットするのでしょうか?
実際にGoogle検索画面を開き「葬儀屋 〇〇(各SNS名)」で検索してみました。(2022年6月時点)
すると…

1. 「葬儀社 YouTube」:約8,680,000件
2. 「葬儀社 Twitter」:約7,360,000件
3. 「葬儀社 Facebook」:約6,780,000件
4. 「葬儀社 Instagram」:約1,720,000件
5. 「葬儀社 TikTok」:約473,000件
検索ヒット数1位は、Googleが運営するYouTubeでした。

2. 各SNSの特徴

では、実際にどんなコンテンツが各SNSにアップされているのでしょうか。

2-1.YouTubeは葬儀系発信チャンネルが多数!

各SNSとの組み合わせでヒットした検索結果を、約10ページずつ覗いてみました。
内容の傾向としては、以下の内容が多いと感じました。

・葬儀の内容(流れや場所・準備)
・情報発信(イベント情報・葬儀プラン・費用など)の案内ページ
・各会社のブログやコラムにつながるリンク(URL)
・Q&AやHow to系
ほかには、実体験の内容を「葬儀業界の○○ランキング」として紹介しているものなどもありました。

YouTubeでの再生回数ランキングを調べる「Influencer」というツールでの検索によると、こちらのチャンネルが飛びぬけた数字をたたき出しています。

チャンネル名:【葬儀葬式ch有限会社佐藤葬祭】
チャンネル登録者数:9.25万人
総再生回数:3389.37万回
(いずれも2022年6月現在)

YouTubeにおける葬儀関連のチャンネルは複数ありますが、こちらはダントツの1位でした。
また、葬儀系チャンネルから再生回数の多いジャンル・内容をピックアップすると、こんな動画があります。

1位【損傷の激しいご遺体は包帯グルグル巻にされるのか?】:約139万回再生

なんともショッキングなタイトルですが、実際にはどうなのか?と解説しており、葬儀ウラ話のような内容もちゃんと説明している、Q&A動画でした。
こうした内容は、葬儀業界で働いていないとわからないので、視聴者さんとしては気になるタイトルかもしれませんね。

2-1-1.YouTube葬祭業チャンネルの再生傾向

視聴回数が多い内容は【お焼香の回数は?】【お香典の〇〇】【お葬式でのマナー】など、お葬式に参加する際に、調べたい内容が人気コンテンツになっておりました。
マナー系の次に人気のあるコンテンツは【霊柩車の中を覗いてみた】【霊柩車の作り・車内がどのようになっているか?】。
これは個人的にも驚きましたが、このタイトルの動画はかなり再生回数が多いのが特徴でした。

そのほか【普段知らない葬儀社従業員の1日の流れ】や、【どんなお仕事内容があるのか?】といったものも。
また【今までに印象に残っているお葬式は…】【都市伝説的な内容:真実は?】のような、バラエティー豊かな動画もあります。

葬儀業は、地域性や風習によって、その地域ごとのこだわりやマナーも存在します。
同じ業界人でも、関東では○○ですが、関西だと……など、YouTubeを見て勉強になることも多々ありました。
その中でも、個人的に驚いたYouTube動画を2件ご紹介します。

【東京都にある民営の斎場】
「ある斎場の火葬炉は、日本で一番高い○○万円かかる火葬炉が存在する」
この動画は、火葬場が完成したお披露目会の動画です。
その額なんと…火葬費用28万円!
参考までに、横浜市の市民火葬の場合は12,000円、東京都町田市にある南多摩斎場は、町田市民の方の場合は火葬費が無料です。
一見その額に驚きますが、照明とスモークによる演出の中、火葬炉に入っていく様子がとても印象的であり、感動いたしました。

また、最近の動画だなあと感じさせられたのが【お葬式の際、マスクは黒?白?なに色が正解?】といったお話でした。
働いている側としては、参列される方のマスクの色はあまり気にしていませんでしたが、色に厳しい葬祭業というイメージから、確かに気になると頷いてしまいました。
ちなみに、その動画での正解は【黒でも白でもOK】。ただし、柄物は控えましょう。ということでした。

2-2.Instagramは映える生花祭壇の写真が印象的

Instagramでは「#葬儀」「#葬儀社」「#お葬式」「#葬儀屋」などの、ハッシュタグ検索を用いて調べました。

「#葬儀」は約5.5万件、「#お葬式」は2.4万件、「#葬儀社」「#葬儀屋」はともに1万件ほどヒットします。
ハッシュタグ「#葬儀」がある投稿を5万件すべて、ひたすら実際に覗きました。

スマホをスクロールすること2時間…。
意外と同じ写真や投稿を繰り返し上げている方が多い!(泣)
しかし、Instagramの投稿傾向は3種類に分類できることが分かりました。(あくまでも個人的な判断です)

1.各葬儀社さんの会館の写真や動画の公開
会館を動画で紹介している内容や、斎場イベントの当日の模様を公開しているなど。
2.祭壇の写真公開
とても豪華な祭壇や、生花祭壇をUPしている投稿が目立ちました。
3.お葬式マナー・あるあるネタ(How to)系の内容

Instagramで相手の写真にアクションできる「いいね」の数は、祭壇写真の投稿に多く見られました。
また個人的な主観ですが、Instagramは、豪華さがあり見映えのする生花祭壇の写真や、人形供養祭の様子などが印象に残りました。

Instagramの番外編としては、お坊さんがお葬式のエピソードを語るショートムービーがとてもわかりやすく、好印象でした。

2-3.短時間でハードルが低く、気軽に葬儀関連の動画を楽しめるTikTok

若者に人気のSNSがTikTokです。
調べる前のイメージでは、ターゲット層が若いイメージがあり、あまり活用しにくいSNSではないだろうか?と思っていました。

実際に、検索結果は一番少ないのですが、各投稿がだいたい1分なので、逆にじっくり見てしまいます。
テンポの良い動画が多く、見ていておもしろいんです!

なんと「葬儀」のキーワードで約3時間…もうこんな時間…!?

いろんなジャンルがあるTikTokですが、【葬儀】のカテゴリーで定期的に投稿、配信されている葬儀社さんは北海道・茅ヶ崎・北九州・千葉・東京の5社程度でした。
内容は、How to系や、質問に答えるコーナーが中心でYouTubeと似ており、霊柩車の紹介や花祭壇の案内も人気投稿になっています。

プロジェクションマッピングの祭壇を活用されている会館さんでは、ニュースに取り上げられたシーンを切り抜きでアップされていました。
夜中に、お仕事のご連絡を受けてからの流れを説明している投稿もあります。
ショートムービーの特長を活かし、端的にまとめて案内している動画はハードルが低く、ちょっとした質問でも学べる時間・ボリュームで、とても面白いと感じました。

2-4.実名投稿が意外な壁になったFacebook

今回のリサーチにて、個人的に一番検索・活用が難しいツールと感じてしまったSNSが「Facebook」です。
「葬儀」「葬儀社」「お葬式」などでキーワード検索はできるのですが、Facebookの特性は、実名での投稿をして「いいね!」をもらう仕組みです。
Facebookを活用する世代も40代〜60代が多く、お葬式にも関心を集めだす世代が中心のSNSではあります。
しかしFacebookは【いいね!】が中心であり、「葬儀」のジャンルは投稿しても「いいね!」を付けづらい印象を受けました。
友人同士での訃報の活用や報告には向いているものの、葬儀社としてイベントを告知するFacebookページや有料広告は、宣伝として活用はできても、そもそもFacebookフレンドになっていないと、相手の投稿画面に表示されにくい仕組みもネックであると感じました。

Facebookの強みから考えると、リピーター様向けのアフターフォローができる内容や、地域の情報の拡散で、ご紹介いただける仕組み化をすることで、個人的に繋がっている強みを活かせるツールなのではないかと思います。

5.目をひくタイトルがカギであるTwitter

Twitterで「葬儀」「葬儀社」「お葬式」とキーワード検索すると、たくさんの件数がヒットします。
各葬儀社の登録件数も、今回のSNS5社では一番多いです。
内容を探っていくと「○○の場合は○○葬儀社へURLはこちら」など、大半は宣伝でした。

Twitter上での葬儀・葬儀社に関してのつぶやきは、『今、おばあちゃんの葬儀に○○へ来た』『火葬場で待つ時間、空はとても青く穏やかで…』など、ご自身の思いを綴っている内容が比較的、印象に残りました。

「つぶやく」特性上、思いを短文でつづる。
Twitterならではの投稿に、それまでのSNSとは異なる活用法が必要なのだと感じました。
たとえばTwitterの投稿にYouTubeのサムネイルを添付し、タイトルで惹きつけURLに進んでもらう仕組みや、コラムページに誘導して自社のHPを見てもらえるように投稿していく必要があるかもしれません。
また、短文ゆえに『目を引くタイトル』が重要なSNSツールなのではないかと学びました。

まとめ

YouTubeは、再生時間が長く、じっくり見ようと思う利用者の方に向いています。
最初からこれを調べよう!知りたいことがあるから検索してみるという方には、YouTube動画は分かりやすくおすすめです。
How to系のピンポイントで知りたい情報は、短時間動画でハードルが低いTikTokが向いています。

また葬儀社は、葬儀後のつながり、アフターフォローも含め、Facebookページの活用も忘れてはいけません。
Twitterはタイトルから興味性を引き出し、自社HPへつなぐ広告ツールとして優秀でしょう。
おしゃれなブランディングイメージで、祭壇などをアップするにはInstagramが最適です。

どのSNSもメリットを活かして、最終的にHPに足を運んでもらえるツールや、事前相談・お問合せをしやすくするツールとしては、ぜひ活用していくべきだと感じました。