出棺の挨拶は誰がいつ行う?内容は?

2022.12.01

故人を火葬場へと送り出す「出棺」。そこでは、遺族の代表者から参列者へ向けて、挨拶がなされます。
参列者へお礼の気持ちをきちんと伝え、お別れを締めくくるには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。

目次
出棺とは
なぜ出棺時に挨拶をするのか
出棺までの流れ
挨拶でおさえるべきポイント
挨拶文例
よくある質問
まとめ

出棺とは

文字通り、故人を火葬場へ送り出す儀式のことを指します。
多くの地域では葬儀の後に行いますが、先に火葬をする地域などの例外もあります。

なぜ出棺時に挨拶をするのか

これはずばり、参列者にとって、故人との最後の対面の時間になるからです。
通常火葬場へ同行するのは、家族・親族・ごく親しい友人など、近親者のみになります。そのため、故人を偲んで集まっていただいた参列者へお礼を伝えることができるのは、出棺が最後の場面になります。
すべての人が故人に思いを馳せる、非常に尊い時間と言えますので、大切にお過ごしいただければ何よりです。

出棺までの流れ

先述したとおり、出棺は「故人との最後の対面の時間」ですが、実際にどのような流れで進んでいくのでしょうか。具体的な進行を下にまとめました。
あくまでも神奈川県の一例として、ご覧ください。

お別れ・お花入れ

宗教儀式(葬儀)が終わった後、出棺の儀式のはじめに行われます。
棺の蓋を取り、ご遺体の周りに「別れ花」を手向けます。
使用される生花は、祭壇に飾ってあったもので、葬儀社にてお盆に載せて準備されます。
生花の他に、副葬品(故人への手向けの品として一緒に火葬する品物)も納めることが可能です。ただし、燃えにくい材質のものは納めることができませんので、ご注意ください。

釘打ちの儀(近年は省略されることが多い)

お花入れが終了すると、棺の蓋を閉じます。
このとき、しばしば見られるのが、「釘打ちの儀」です。
はじめに葬儀社のスタッフが棺の四隅に釘を半分ほどまで打ち、その後故人と近しい人から順番に、釘の頭を石で打っていきます。コンコンと一人2回ずつ打ちますが、あくまで儀式として行うものなので、強い力で行う必要はありません。最後に再度葬儀社のスタッフが釘を完全に打ち込みます。
釘打ちを行う理由には諸説あります。かつて死を穢れとして扱っていた名残で、死を封じ込めるという考えがあり、これは日本古来の神道の思想が影響しているものです。
また、釘を打つ石は三途の川の石を意味しており、故人が無事に三途の川を渡ることができるように願うという謂われもあります。

遺族代表の挨拶

ここで遺族の代表者が参列者へ向けて、挨拶をします。
ほとんどの場合喪主が行いますが、別の人でも問題はありません。
喪主以外の家族も、参列者の方を向いて、喪主を中心に整列しましょう。
挨拶のタイミングは、お棺を霊柩車へ運んだ後の場合もあります。

お棺を霊柩車へ

ご遺体を納めたお棺は重さがあるため、親族(主に男性)が両脇から支え、6名~8名ほどで運びます。近年は手運びではなく、キャスター付きの台車での移動も珍しくありません。
仏式の場合では、僧侶と位牌・遺影を持った家族が、お棺を霊柩車まで先導します。

火葬場へ出発

火葬場へ同行する近親者は指定の車両へ乗り込みます。
火葬場が隣接している場合、徒歩で移動することもあります。

挨拶でおさえるべきポイント

出棺の挨拶には、いくつかおさえるべきポイントがあります。必ずしもその通りに話さなくてはいけないという訳ではありませんが、ポイントを意識することで、より話しやすくなるかもしれません。

1.自身と故人の間柄を伝える
2.会葬のお礼を述べる
3.故人との生前の交流に対するお礼を述べる
4.故人との思い出に触れる
5.今後の変わらぬお付き合いをお願いする

また、挨拶にあたり、避けた方が良い表現もいくつかあります。
「忌み言葉」:不吉なイメージを持つ言葉
・消える ・散る ・落ちる ・浮かばれない など
「重ね言葉」:不幸が重なることを連想させる言葉
・重ね重ね ・度々 ・ますます ・いよいよ など

挨拶文例

前述のポイントを踏まえた簡単な文例を紹介します。

喪主が家族の場合

仮に、挨拶は喪主(故人の長男)が行うものとします。

遺族を代表いたしまして、皆様にご挨拶を申し上げます。
私は、故○○(故人の名前)の長男にあたります、○○(喪主の名前)でございます。

本日は、ご多用にもかかわらず、ご会葬・ご焼香を賜り誠にありがとうございました。お陰をもちまして葬儀・告別式も滞りなく進み、これより出棺の運びとなりました。
生前はひとかたならぬご厚誼にあずかり、今ここに最後のお見送りまでいただきまして、故人もさぞかし皆様のご厚情に感謝いたしていることと存じます。

父は昨年末に病に倒れ、○月○日に○歳の生涯を閉じました。
仕事一筋の父ではございましたが、定年後にゴルフという趣味に出会い、非常にいきいきとした老後を過ごしました。実りの多い人生を送ることができましたのも、ひとえに、皆様のお力添えがあってのことと存じます。

残されました私どもに対しましても、亡き父の生前と同様にご指導を賜りますようお願い申し上げまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。

本日は、誠にありがとうございました。

喪主が親族の場合

続いては、仮に喪主以外の親族代表者が挨拶を行う場合の、冒頭の文例を示します。

本来であれば、喪主から挨拶を申し上げるところではございますが、○○(喪主が挨拶をできない理由)のため、喪主に代わり親族を代表してご挨拶を申し上げます。私は、故人の○○(続柄)にあたります、○○(名前)と申します。

・・・

社葬の場合

おまけになりますが、社葬(会社が主催する葬儀)の場合の、葬儀委員長の挨拶の文例も示します。故人は、△△工業株式会社の名誉相談役であったものとします。

本日はご多忙のところ、△△工業株式会社の社葬に多数ご参列いただき、誠にありがとうございます。遺族ならびに社員一同を代表し、厚く御礼申し上げます。

故人○○(故人の名前)名誉相談役は一昨年より○○病院にて療養中でございましたが、○月○日○時○分に、遺族と当社役員の見守る中で永眠いたしました。享年○歳でございました。

故人は、○○高等学校を卒業後、○○大学の工学部に学び、その後△△工業株式会社に入社いたしました。主にエンジン技術の開発に従事し、○歳の若さで技術部長に就任。当社の製品のみならず、業界全体に革新的な進歩をもたらす働きぶりは、常に注目の的でありました。5年前に健康上の理由により現場からは退いたものの、名誉相談役として、会社のより一層の発展に尽力されました。また、皆様もよくご存知のように、故人は万人に慕われる人格者であり、特に後進の育成への熱意には目を見張るものがありました。

学生時代からの唯一の趣味であったテニスは相当な腕前で、会社の懇親会では無敗を誇っていたことを記憶しております。「健全な精神は健全な肉体に宿る」が口癖であった故人の笑顔を思い出しては、未だに亡くなった事実が受け入れがたく、残念という言葉では言い表せません。

○○名誉相談役の死が日本エンジン界にとって非常に惜しいことであると同時に、彼の成しえた数々の偉業が今後50年100年と不滅であることを確信するところであります。今はただ、故人の旅立ちが安らかなものであることを祈るばかりです。

甚だとりとめのない内容になってしまいましたが、遺族に代わりまして、△△工業株式会社社葬の挨拶といたします。

よくある質問

いざ挨拶をするとなると、不安なことが出てくるかと思います。
出棺の挨拶に関して、よくあるご質問とその回答を以下にまとめました。

Q:挨拶を行うのは、喪主でなくてはいけませんか?
A:喪主以外が挨拶を行うこともございます。
例えば、喪主が体調不良であったり高齢であったりする場合に、他の親族代表者が行うことが考えられます。

Q:紙を見ながら挨拶しても大丈夫ですか?
A:もちろん大丈夫です。
大切な方を亡くしておられますから、言葉に詰まってしまうこともあるかもしれません。事前に原稿を用意しておくことが、安心につながるかと思います。

Q:どのくらいの時間、話すべきでしょうか?
A:目安としては2,3分というところです。
参列者は、立ったまま挨拶を聞くことになりますので、あまりに長い挨拶は望ましくありません。

Q:文例の言葉が難しいです。言い換えても大丈夫ですか?
A:もちろん大丈夫です。
少しでも、挨拶をする人自身の言葉で話す方が、お礼の気持ちも伝わりやすいかと思います。

Q:家族葬の場合も、出棺の挨拶は必要ですか?
A:必ずしも必要ではありません。
家族葬と一口に言っても、遠方からの親族の参列がある場合や、10名以下の身内のみで行う場合など、さまざまなケースがあります。参列者の顔ぶれによっては、挨拶を行う方が不自然だということもあるかもしれません。
不安な場合には、葬儀社のスタッフに相談するのも良いでしょう。

まとめ

出棺は故人との最後のお別れの場面です。
出棺時は、参列者へお礼の気持ちを伝えるために挨拶をしましょう。
挨拶においては、おさえるべきポイントを踏まえ、なるべく自分の言葉を使うことで、参列者への感謝や生前の姿をより深く伝えることができます。
挨拶を考えるのが難しい、こういう挨拶で失礼はないかと迷われたら、ぜひ葬儀社のスタッフにご相談ください。