無宗教形式の葬儀とは?日本の現状やメリット・デメリット、式の内容などをご紹介

2023.05.11

日本で執り行われる葬儀のほとんどが、仏式によるものです。しかし近年、無宗教形式の葬儀を行う方も増えています。

無宗教形式の葬儀といわれても、具体的にどのような内容で進めるのかについては、ほとんどの方がご存じないでしょう。そこで今回は、日本における無宗教を掘り下げつつ、無宗教形式の葬儀の内容やメリット。デメリットなどをご紹介します。

無宗教の方が増えている背景

出典:NHK放送文化研究所/日本人の宗教的意識や行動はどう変わったか 放送研究と調査2019年4月より

近年、一部の新宗教の家庭を除き、ご家庭の宗教宗派に触れずに育つことは普通のことだといえるでしょう。NHK放送文化研究所が2018年に行った宗教宗派に関する調査においても「信仰している宗教がない」と答えた方が6割を超えていました。

葬儀の依頼があった際には、葬儀会社よりご家庭の宗教宗派に関する質問をしますが「調べてみないとわからない」「家の宗教はない」「無宗教です」と答える方が多いのも納得です。

昔は3世代が1つの家に住み、祖父母が先祖の仏壇に手を合わせて、朝晩お水やご飯などの供物を供え、孫も一緒にお参りをするのが普通でした。お彼岸やお盆には、菩提寺の僧侶に読経や法話をしてもらい、季節ごとの法要では親戚も交え、亡くなった曽祖父母の話や供養の意義を耳にするのは、よくある日常でした。

そのため、ご家庭の宗教宗派に触れる機会が当たり前のようにありました。しかし、都心部の核家族化が進んだことにより、祖父母や親戚から見聞きする機会は大幅に減りました。先祖の仏壇や神棚が自宅にないご家庭も増えています。ご近所付き合いも減り、小規模な葬儀である家族葬が盛んになった近年においては、近所の方の葬儀に参列しないことも多いです。

日本における無宗教の特徴

三代歌川豊国/岩戸神楽之起顕

近年、日本で実施っされる葬儀の9割程度が、寺院に読経をしていただく仏式の葬儀です。火葬だけを行う火葬式でも、ほとんどの方がお別れの作法としてご焼香して手を合わせます。6割も「信仰している宗教がない」と答えているにも関わらず、宗教的行為を行っている方が多いのは現状です。

ただし無宗教といっても、神や仏の存在を否定する無神論者でないことは明らかでしょう。何かを信じているがそれを宗教とは認識しておらず、傾倒している宗派がないという意味において、無宗教と答えているものだと推察されます。

日本では、日本国憲法第20条において「信教の自由は何人に対してもこれを保障する」と定められているように、信教の自由が認められており国教はありません。国教のある国では、特定の宗派に属していない方が、社会的秩序を乱すものと捉えられることもあります。

日本社会では、どの宗教に属しているかは重視されません。逆に、昨今の既存宗教や新宗教による金銭トラブル・道徳的倫理観に対しての否定的なイメージが、無宗教と言わせている部分もあるように思います。

日本人の神に対する考え方

日本では、古来より、「八百万の神々」を崇めてきた経緯があります。「すべての物・事象に神様が存在する」という考え方が、潜在的に根付いている文化です。

太陽の光・雨を降らす神様の恵を享受して稲作を行い、自然災害も神様が起こすものと考えられてきました。かまどやお米一粒ごと、トイレにも神様がいると考えられており、古くは病気も「疫神」が原因だと考えられていたようです。また、先祖が神様となり子孫を見守ってくれると考えられるなど、日々の生活の中に多くの神が存在します。さらに、神道における神の考え方と、儒教的な道徳教育の影響も大きいでしょう。

日本における無宗教の現状

日本人の多くが、キリスト教の教会で愛を誓う結婚式を行います。イエス・キリストの生誕を祝うクリスマスを楽しみ、お正月は家に年神様を迎えて初詣に行き、昨年の感謝と今年の多幸を祈ります。お彼岸にはあの世とこの世が近くなるため、先祖への想いが通じやすくなると考えられており、お墓参りに行く方も多いでしょう。

またお盆には、先祖があの世から帰ってくるため、ご親戚が集まって会食と供養、先祖の送り迎えを行うのが一般的です。子どもが生まれたら神社にお宮参りに行き、地域に新たな氏子が無事に生まれたことを神様に報告します。七五三を行って、成長の無事も報告します。

病気の快復を神様に祈り、勝負事も神様に祈ります。宝くじが当たるよう、神様にお願いすることもあるでしょう。大切なご家族が亡くなってしまった場合、故人様のご冥福を祈り寺院に仏となることを導いてもらう読経や、家の守り神になってもらうための儀式、新たな世界での復活を願う儀式なども執り行われます。

日本人は仏教のブッタも、キリスト教のイエスも神様の1人として捉え、受け入れています。日本における無宗教は、欧米諸国が論ずる宗教的行為をしないものとは、大きく異なるものだといえるでしょう。

無宗教形式の葬儀とは?種類と流れ

無宗教形式の葬儀は、宗教的な儀式を行わず、手紙を読んだり歌ったり、生演奏を聴いたりするなど、やりたいことを自由に行う葬儀です。儀式を執り行わないため、火葬だけを行う直葬も無宗教形式の1つだといえるでしょう。

また、式場を借りて行う無宗教形式の葬儀は、式次第があるものとないものの、大きく2つに分類されます。ここでは、それぞれの無宗教形式の葬儀の内容と流れをご紹介します。

式次第がない無宗教形式の葬儀

式次第がない無宗教形式の葬儀では、司会者によるナレーションを含め、基本的に式次第はありません。ご家族やご親戚、ご友人が集まって、故人様と向き合う時間を過ごします。

棺を囲んで、故人様の話をしたり、ご遺体に触れたりするなど、何事にも代えられない時間を共有することが一般的です。ご親戚との関係が希薄になってきた近年においては、近況を話合うよい機会だといえるでしょう。故人様を忘れないことや、思い出すことが、供養につながります。

直葬(火葬式)の場合、故人様との時間をゆっくり過ごした後、献花やご焼香を行い最後の時間を迎えます。

直葬の流れについては、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

関連記事:火葬式(直葬)の流れとは?メリット・デメリットや火葬場の選び方も紹介

式次第がある無宗教形式の葬儀

式次第がある無宗教形式の葬儀では、故人様やご遺族が既存の宗教儀礼ではなく、好きだったことやしてあげたいことを中心において、式次第を構成します。社葬や有名人のお別れ会のような、大規模な形式でも実施される葬儀です。

式次第がある無宗教形式の葬儀における、大まかな流れは下記の通りです。なお、●の部分が「宗教儀礼に代わるもの」です。参列者と共有し故人様を偲びます。

・司会者による開式のアナウンス・ナレーション
・黙祷
・主催者による無宗教形式で送ることや、故人様との想い出と共に参列者へお礼を述べる挨拶
(参列者が多数の場合など、お通夜時は焼香後に退席となるため先に行う必要がある)
・●故人様へのメッセージ(数名)
・●司会者による弔電の奉読
・●好きだった音楽や捧げたい曲を生演奏やCD再生にて献奏、もしくは映像の上映
・参列者からの故人様への想いを受けて、献花やご焼香にてお別れの作法
・主催者の挨拶
・司会者による閉式のアナウンス・ナレーション
・愛用品や供えたお花を手向ける最後の時間

式次第がある無宗教形式の葬儀を行う場合は、どのような内容にするのかについて、事前に葬儀会社のスタッフとしっかり相談しておくことが大切です。

無宗教形式の葬儀を行うメリット

無宗教の葬儀を行うことによって、以下のメリットが得られます。

・宗教者への謝礼が不要
・故人様の意向に沿った葬儀を実現可能

ここでは、それぞれの内容について確認しておきましょう。

宗教者への謝礼が不要

無宗教形式の葬儀は、宗教者を呼ぶ必要がないため、お布施などの謝礼が必要ありません。そのため、その分だけ葬儀費用を安く抑えられます。葬儀の演出などに費用を回せるのは、メリットだといえるでしょう。

故人様の意向に沿った葬儀を実現可能

無宗教形式の葬儀は、宗教的儀式や慣習に縛られないため、故人様やご遺族の意向を汲んだ形の葬儀を行える点もメリットです。そのため、他宗派の儀式に参加できない宗派の方であっても、故人様とお別れする機会を持てます。

また一般的な葬儀では、ご遺体を安置する必要があったり、焼香をしなければならなかったりするため、葬儀会場は葬儀ホールや寺院、自宅などに限られています。しかし、無宗教岸城の葬儀では、ご遺体を安置しない場合や焼香をしない場合もあるため、レストランやホテルなど、好きな会場を選にやすい点もメリットです。

無宗教の葬儀を行うデメリット

無宗教形式の葬儀を行うデメリットは、以下のようなものが挙げられます。

・親族や関係者から理解を得られない可能性がある
・葬儀の内容を決めるのが大変
・菩提寺とのトラブルが発生する可能性がある
・お墓に入れない可能性がある

無宗教形式の葬儀を希望する場合は、事前に周囲との話し合いや相談を行うことが重要です。そのためにも、どのようなデメリットがあるのかについて確認しておきましょう。

親族や関係者から理解を得られない可能性がある

無宗教形式の葬儀を行う場合には、ご家族やご親戚などから反対される可能性もあります。特に、ご親戚が何かの宗教を信仰している場合には、説得するまでに多くの苦労があるでしょう。したがって、無宗教形式の葬儀を希望する場合には、周囲の説得が必要になることを覚えておく必要があります。

葬儀の内容を決めるのが大変

無宗教形式の葬儀は、基本的にどのような形式で行っても構いません。選択肢が非常に広くなるため、逆に式の形式を決めにくくなる点がデメリットです。そのため、入念な事前準備を行わなければ、不満が残る葬儀になる可能性もあるでしょう。

菩提寺とのトラブルが発生する可能性がある

菩提寺があるご家庭で無宗教形式の葬儀を行う場合には、事前に僧侶へ話を通しておく必要があります。勝手に無宗教形式の葬儀を行ってしまい、事後になって菩提寺が知る形になった場合、トラブルへ発展する可能性が高いためです。他のご家族やご親戚に悪影響を与えるリスクもあるため、事前によく話あっておかなくてはいけません。

お墓に入れない可能性がある

無宗教形式の葬儀を行った場合は、お墓に入れなくなることも視野に入れなければなりません。菩提寺の檀家区画のお墓に納骨する際には、事前に宗教儀礼を執り行う必要があるためです。

そのため、無宗教形式の葬儀を行った際「お墓を更地にして出ていけ」と言われる可能性もあるでしょう。故人様はもちろん、既にお墓に入っている方の今後にも影響するため、兄弟筋などのご親戚への配慮も必要です。

民営の墓地にお墓があり、納骨時は問題がないとしても、菩提寺との付き合いをどのようにしていくのかという判断を迫られることもあります。また、特定の宗教を信仰しているご親戚を説得するために、強い意志を持って立ち向かわなくてはいけない可能性もあるでしょう。

無宗教形式の葬儀における費用相場

無宗教形式の葬儀を行う場合の費用は、規模や演出によって異なりますが、一般的には100万~200万円程度が相場です。僧侶を呼ばない分、お布施などの出費を抑えられますが、音楽や映像などの演出にかかる費用は別途必要になる場合があります。火葬だけを行う場合は20~30万円程度が相場です。ご親戚への振舞い費用なども変わりません。

つまり、無宗教形式で行う葬儀と、よくある仏式での葬儀を比較した場合、金額的な違いは宗教者に支払う費用がない程度です。

故人様が生前に「お布施を払うのが嫌だから」と言っていたことを理由に、無宗教の葬儀を執り行いたいと依頼されるケースもしばしばあります。我々葬儀会社としては、皆様が後悔ないよう故人様を送ることがもっとも大切なことだと考えています。そのため、葬儀はどのような形式であっても構わないという考え方が基本です。

ただし、金銭的な理由だけで無宗教形式の葬儀を選択した場合、後になって困ることもあるため注意しなくてはいけません。故人様はもちろん、ご遺族も納得して無宗教の葬儀を選択することが重要です。

なお、一般的な葬儀費用については、以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。

関連記事:葬儀費用の平均とは?内訳や家族葬などの種類も紹介

まとめ

無宗教形式の葬儀は、故人様だけでなく、ご遺族の希望も叶う形式で実施することが大切です。法事や戒名など、葬儀の後で検討しなくてはいけないことも多いため、本当に無宗教形式で葬儀を行うべきなのか、ご家族やご親戚としっかりと相談して、後悔しないようにしましょう。

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