神奈川県の互助会の解約について

2022.10.05

お葬儀のご相談をお受けする際に、互助会について、以下のようなお問い合わせを受けることがございます。
「母が互助会に入っているのだけれど、杉浦本店さんで使えますか?」
「若い頃に互助会の契約をしたのだけれど、解約できますか?」

結論としては、互助会は、その団体に加盟している一部の葬儀社でしか使うことができません。
筆者自身が、互助会に6年ほど勤務した経験も踏まえて、互助会の利用や解約の注意点について解説します。

もくじ

1.そもそも互助会って何?
2.全国でどれくらいの契約があるのか?
3.なぜ互助会は流行り、そして廃れたのか?
4.互助会のメリットとデメリット
5.解約の具体的な方法は?
6.解約するのにお金が掛かるの?
7.解約金の一部を無効とする判例も!
8.さいごに

1.そもそも互助会って何?

互助会は、正式には、冠婚葬祭互助会と言います。
加入者が毎月一定の掛け金を積み立てて、冠婚葬祭の儀式に対するサービスを受けられる仕組みです。

簡単に言えば、事前の分割払いです。
例えば、60万円の葬儀プランを、生前から毎月5,000円ずつ、120か月(10年間)積み立てます。
積み立てた後は、生涯、冠婚葬祭サービスを受ける権利が続くというものです。

似ているものとして、生命保険の死亡保険をイメージすると良いでしょう。
毎月掛け金を積み立てて、亡くなったときに死亡保険金を受け取れるのが生命保険で、葬祭サービスを受けられるのが互助会です。

2.全国でどれくらいの契約があるのか?

令和4年3月現在では、以下のとおりであると推測されています。
・全国の互助会の数:240社
・互助会の契約件数:2,204万件
・積立金の預かり額:2兆4,678億円
(参照:互助会保証株式会社)

単純に、積立金を会社数で割ると、1社あたり102億8,250万円を預かっているということになります。
実際には、このうちの半分は、積立金保全のために供託義務があり、自由に使うことはできません。
それでも1社あたり、残り半分の約50億円を事前に預かっているというのは、各互助会の会社側としては、資金面で大きなメリットになります。

3.なぜ互助会は流行り、そして廃れたのか?

互助会は昭和20年代に誕生し、昭和40年代に大きく成長しました。
戦後の復興期に、名前の通り「互」いに「助」け合う精神で、隣近所でお金を出し合い、1着の花嫁衣装を購入し、その1着の花嫁衣装を地域で結婚があるごとに、交代で使用したことが起源とも言われています。
昭和40年代には全国に広く普及しましたが、冠婚葬祭という不透明な料金体系の業界に対して、あらかじめ金額とサービス内容が約束されていることも、多くの人に支持された理由かと思います。

ただ、1990年初めのバブル崩壊以後、約30年以上続く日本経済の低成長の時代で、人々の葬儀に対する認識も大きく変わりました。
バブル期までは、大勢の人に見送られる葬儀が良いとされ、血縁、地縁、職縁など、多くの関係者が参列する葬儀が一般的でした。
しかし昨今は、親族や親しい知人のみを招く家族葬や、葬儀は行わずに火葬のみ行う直葬・火葬式という形式が年々増加しています。
更には、2020年以降のコロナ禍により、感染リスクとなる接触機会を減らすことを理由に、その傾向はより一層強くなっています。

つまり、自分が互助会に加入した頃にイメージしていた葬儀と、今、一般的になっている葬儀に大きなズレが生じており、時代に合っていないサービス内容と捉えられることが増えているのではないでしょうか。

4.互助会のメリットとデメリット

よく互助会のメリットとして、「半額は保全されていて安心」「万が一、倒産しても他の会社がカバーできる」「全国どこに引っ越しても対応できる」といった記載を目にしますが、実際に葬儀を検討する段階では、あまり重要ではない要素かと思います。
ここでは、実際にご危篤などの状況で、葬儀について具体的に検討しなくてはいけないときの視点で、互助会のメリットとデメリットについて解説します。

【互助会のメリット】葬儀式場のハード面(設備、立地など)が良いことが多い

最大にして、唯一の互助会のメリット。それは、葬儀式場のハード面です。
・大人数がゆとりをもって参列できる式場
・数十台停められる駐車場
・駅から徒歩圏内の好立地
・豪華なロビーや内装
・ホテルのようなベッド備え付けの親族控室など
互助会が運営している葬儀式場は、ハード面が充実していることが多いです。

これには、先述した前受け金の存在が大きいと推測されます。
半分を供託すると言っても、残り半分は、式場などの設備面に投資することが可能です。
全国で1兆2,000億円、1社平均50億円を自由に使うことができるからこそ、式場のハード面では、互助会の式場は大きなメリットがあると言えます。

費用は高くても気にしないから、参列する親族・知人に、少しでも快適な空間で過ごして欲しいと考える場合には、互助会での葬儀も適していると思います。

逆に考えると、互助会に入っていながら、その互助会の式場を使わず、公営や民営の貸し式場を使用することは、本当にもったいないことです。

【互助会のデメリット】1.金額が高い

ハード面の充実に伴い、仕方のない部分もありますが、葬儀に掛かる金額は高いです。
互助会の積立金額だけで葬儀を行うことは、まず、できません。
その互助会が運営する自社式場ですら、別途使用料が掛かることが一般的ですし、火葬料や安置料、メイク、供花、食事、返礼品など、プラン以外で掛かる項目も多数あります。
少人数で安く済ませたとしても、積み立てた金額以外に、50~100万円くらいの出費は見込んだほうが良いと思います。

【互助会のデメリット】2.互助会で使用できる式場は、ごく一部に限られる

互助会に加盟している葬儀社は全国にありますが、全国どこの葬儀式場でも互助会の会員証を使えるわけではありません。
あくまでも、互助会に加盟している葬儀社でのみ、使うことができます。
参考に、神奈川県内の互助会の代表例を記載しますが、これらの葬儀式場以外では、積み立てた会員証を使うことができません。

《神奈川県の互助会系葬儀社の代表例》
・神奈川式典
・くらしの友
・サン・ライフ
・セレモニア
・湘和葬祭(湘和会堂など)
・葬儀の板橋(ほうさい殿)
・大成祭典
・千代田セレモニー
・二葉
・メモワール(メモワールホール、エヴァホールなど)
・横須賀冠婚葬祭互助会

5.解約の具体的な方法は?

それでは、具体的に互助会を解約する手順について解説します。
1.互助会に連絡し、解約の意思を伝える。
2.訪問もしくは郵送にて、書類に必要事項を記入し提出する。
3.後日、払い戻し金が振り込まれる。

互助会解約時の注意点

ここ数年、減少傾向にはありますが、経済産業省・消費者相談室にも、互助会の解約についてのトラブルが寄せられています。

経済産業省・消費者相談室に寄せられた

互助会解約についての相談件数

2018年

207件

2019年

143件

2020年

76件

(※参照:経済産業省 消費者相談室 消費者相談の概況)

具体的な相談内容としては、以下の項目が多いようです。
・「解約手数料が高い」
・「解約手数料の計算方法が不明確だ」
・「本人が窓口に来ないと解約できないと言われた」
・「担当者が不在だから解約できない」

6.解約するのにお金が掛かるの?

互助会の解約にはお金が掛かります。
これは、互助会契約の根拠となっている割賦販売法という法律でも解約金が認められていますので、積み立てた金額の全てを返してもらうということは不可能です。

解約金については、個々の互助会が契約の際に説明する約款に記載されていますが、一般的には、積立金額の15~20%前後が多いようです。

仮に60万円のコースだとすると、60万円積み立てたのに、解約すると10万円ほどが差し引かれ、50万円しか戻ってこないということになります。

たしかに、契約の際に説明を受けている事項なので、契約上は有効なのですが、「あまりにも高い」「金額の根拠に納得できない」ということで、トラブルが多発しています。

7.解約金の一部を無効とする判例も!

契約時の約款に書かれているとは言っても、「あまりにも解約金が高くて納得できない!」と、日本全国で解約金の無効を訴える訴訟も起きています。

最近では、令和2年5月の福岡高裁の判例で「消費者契約法に基づき、解約に伴う平均的な損害額は、契約締結に要する費用1万6,149円及び解約手続きに要する費用5,312円の合計2万1,461円に、入会期間1か月につき会員管理に要する費用122円を加えた額」を認めるという事例もあります。

たしかに、解約したとは言っても、契約や管理に掛かる費用は発生しているので、ある程度は仕方ないと考えるべきかとも思います。

8.さいごに

ここまで、互助会と解約について解説いたしました。
解約金については納得しがたい部分もあるかもしれませんが、よほど法外な金額を提示されたのでなければ、約款通り、解約金を差し引いた積立金を戻してもらい、自分の今の希望にあった葬儀社で、気持ちを新たに進めたほうが良いかと思います。

納得がいかない場合は窓口に相談を

もし、どうしても納得ができないという場合は、上記の判例なども参考にして、互助会と交渉していただくか、下記の窓口へのご相談をご検討ください。

経済産業省 消費者相談室:03-3501-4657
・受付曜日:月曜日~金曜日(祝祭日及び年末年始は除く。)
・受付時間:10時00分~16時30分

独立行政法人 国民生活センター:消費者ホットライン 188(局番なし)
※ガイダンスで、最寄りの消費生活センターなどを案内

●相談の際に準備すると良いもの●
・互助会名
・互助会に加入した日付
・互助会に解約の申し出をした日付
・互助会とのやり取りの内容
・互助会の担当者
・具体的な相談内容「理由をつけて解約させてくれない」「解約金があまりにも高額で納得できない」など