お坊さんが持っているものとは?お坊さんが使う道具をご紹介

2022.10.05

お葬式は、お坊さんがお経を唱え、大切な方の供養をしてくれる場でもあります。
仏教にはたくさんの宗派があり、お坊さんが使う道具も異なります。
今回は、お坊さんが使う道具である法具の種類についてご説明します。

○金剛杵(こんごうしょ)

金剛杵は、天台宗・真言宗・禅宗で使用されます。
仏の教えが煩悩を滅ぼし、悟りを求める心の様子を、インド神話上の武器に例えて法具にしたものです。
鉾が外に向かっているときは、他を傷つける武器です。
しかし内側に向かったときは、煩悩に振り回されることなく自らを制御し、成長させ、他に善行をなす行動をとることができることを意味します。
五本の鉾は、五仏の智慧である五智を表し、五仏は曼陀羅の世界における、そのほかのすべての諸尊の根本の尊格でもあります。

【五仏とは】

・大日如来
・阿顣如来(あしゅくにょらい)
・宝生如来
・阿弥陀如来
・不空成就如来

【五智とは】

・法界体性智
・大圓鏡智
・平等性智
・妙観察智
・成所作智

形は杵(きね)の形に似ており、中央部が取っ手で、両端に刃がついています。
あらゆるものを打ち砕くところから金剛の名前がつきました。

○散華(さんげ)

散華は、たくさんの宗派で使用されます。
天台宗では【散華:さんげ】、浄土宗では【散華:さんか】、浄土真宗本願寺派・真宗高田派・真宗興正派では【華葩:けは】、真宗大谷派・真宗佛光寺派では【葩:はなびら】などと呼ばれています。

美しい花びらにはファンが多い

花びらを撒く行為や作法を散華と呼びます。
散華には、釈迦に由来する蓮の花びらを撒いて、場を清め、仏を迎えるといった意味合いもあるそうです。
昔は、散華には本物の花びらを使用していたようですが、現在ではその多くは紙でできていて、場を清めるために良い香りをつけたり、絵や文字が描かれていたりすることもあります。
描いてある絵は千差万別で、仏が描かれているものや、極楽浄土、花や詩が描かれているものなどさまざまです。
持ち帰ってコレクションにする方も多いそうで、財布に入れたり、本のしおりとして使ったり……。
たくさんのデザインがあるので、集めてみるのも楽しいかもしれません。

○払子(ほっす)

払子は、長い獣毛や麻を束ねて柄をつけたものです。
もとは、蚊やハエなどを殺さず、追い払うためにインドで使われていました。
こう聞くと実用的な面が強いように思われますが、現代の仏教では、煩悩や災いなどを払う意味で葬儀に使用されています。
その理由は、仏教が各地に伝わっていく中で、払子がお釈迦様の髪の毛に見立てられ、煩悩や穢れを払う道具になったり、修行者を導いたりするための道具としても使われるようになったから、ということのようです。
主に説法のときに、威儀を正すために持つもので、これを振ることが説法の象徴とされています。

払子は宗派によって使用有無や回数が異なる

払子は浄土真宗以外の導師の装身具として使われているようです。
使い方は、まず合掌した手の人差し指と親指の間から、払子の柄を出すようにして持ちます。
手にした後、上、下、左、右、前、後ろに動かして使います。
使用回数は各宗派で厳格に決められていて、三回の場合は、右、左、右。
五回の場合は右、左、右、左、前の順番で振っていきます。
適切なタイミングで払子を振ることで、故人が生前に持っていた煩悩や穢れが落ち、迷いを断ち切ることができるとされています。
故人が心を開くことで決心がつき、お釈迦様の弟子になる準備が完了するのです。

○松明(たいまつ)

松明は、仏教の葬儀の際に【引導】の儀式で使用されます。
引導は故人を仏道に引き入れて導くという意味です。
昔は本物の松明を使用していたそうですが、現代では火災などのリスクを抑えるため、大きなろうそくのような形や、マッチ棒のような形の松明、長いお線香を使用することがあります。

松明の3つの意味

松明は以下の3つの働きを持ち、故人を導き、極楽浄土へと送り出す役目を持っているのです。
・現世と来世の懸け橋となる
・魔よけ
・煩悩を焼き消し去る

宗派ごとの松明の使い方

松明を使う宗派は多く、宗派によって意味合いが異なる場合があります。

1.臨済宗
臨済宗ではお線香の前に故人を偲び、死を悼む気持ちを漢詩に表した【引導法語】が唱えられます。
この直前に、松明に見立てたものを空中で円を描くように回して投げます。
松明を投げるという行為は、中国の禅僧、黄檗希運禅師に由来しているといわれているのです。
臨済宗では悟りを得て現世への未練を断ち切るために松明を投げるようになったといわれています。

2.曹洞宗
曹洞宗では、松明に見立てたものを右回り、左回りに回して故人を悟りの世界へ導きます。
その後、払子(ほっす)に持ち替えて、臨済宗と同様に引導法語を唱えます。
最後に「喝」と大きな声で唱えるのが特徴です。

3.浄土宗
浄土宗では引導下炬(いんどうあこ)という、故人を極楽浄土へと送り出す最も大切な儀式の中で、2本の松明を使用します。
1本は厭離穢土(えんりえど)と呼ばれ、穢れたこの世から離れることを願い、最初に捨てることでこの世から離れることを意味するものです。
もう1本は欣求浄土(ごんぐじょうど)と呼ばれ、浄土を求める気持ちを表し、円を描いて下炬引導分を唱えた後に捨て、念仏を十篇唱えます。

○数珠(じゅず)

数珠は念珠ともいい、仏教で仏様を拝むときに手にかけて使うほか、お念仏やお経を唱えるときに、何回唱えたかを数えるために使う仏具です。
キリスト教や神道の儀式ではお経を唱えないため、数珠は不要です。

数珠は、大きく【本式数珠】と【略式数珠】に分かれます。
正式な数珠は【本式数珠】と呼ばれる108の主玉をつないだもので、人間の煩悩の数である108の一つひとつが煩悩を引きうけてくれる仏様であり、身につけることで功徳を得るという意味があります。

宗派によっても数珠の種類は異なり、浄土宗や浄土真宗などのように、玉数が108ではない宗派もあります。
浄土宗の場合は、数の違う2連の輪違いになっている数珠を使います。
1連には27個、もう1連には20個または40個の玉が連なっています。
浄土真宗では数は決まっておらず、蓮如結びといって、数取りができない結び方が特徴です。
天台宗では玉が平たいものを使用し、真言宗では振り分けの数珠を使用するなど、宗派によってさまざまです。

【略式数珠】は一連で持ちやすく、ほとんどの宗派で使えるため、デザインや素材も豊富です。
本式数珠の108個を基準として54個、36個、27個、18個があります。
今は玉数にこだわらず、使いやすさや見た目の良さ、コンパクトで持ち運びしやすいなどの実用面を重視して作られているものも多いようです。
男性用、女性用と明確に分かれていることはなく、好みに合わせて選びます。
男性用の数珠は10ミリ以上、女性用は8ミリ以下で作られています。

○印金(いんきん)

印金は携帯用のおりんのことで、小さくても澄んだ美しい音で響きます。
持ち歩ける仏具で、お墓の前や火葬場でお坊さんが使用します。

○扇子(せんす)

扇子は、暑いときに扇ぐために持っているものではありません。
【中啓】または【夏扇】という扇子を右手に持ちます。
通常は開くことはなく、経本や数珠を畳の上に直に置かないように、扇を開いてその上に置くためのものです。
東本願寺派では、座るときにわざと音を立てて落とします。
雑なのではなく、わざと音を立てる作法です。
他の宗派では見ることはないので、驚く方もいるかもしれません。

まとめ

お坊さんが持つ道具についてあげてきましたが、ほかにも、木魚、おりん、妙鉢、銅鑼、懺法太鼓(せんぼうだいこ)、音木、鉦吾などたくさんあり、宗派によってどの鳴り物を使用するかは異なります。
これらはお坊さんが持ち歩くというよりも、お葬式のときに使用するものです。

道具には、故人を極楽浄土へ導き、現世の思いを断つ意味合いで使用されるものが多いようです。
お盆の法事や葬儀で、今回ご紹介した道具を目にすることもあるかもしれませんね。