お香典返しの金額相場とは?時期やマナー、歴史も紹介

2022.04.06

お葬式でお香典をいただくと、特別な事情がない限りお香典返しを準備する必要があります。もちろん、お香典の辞退や地域の風習などによって、不要な場合もあるでしょう。

しかし、せっかくお香典返しを準備するのであれば、適切なマナーで対応したいところです。そこで今回は、お香典返しの概要や金額の相場、渡す時期、マナーをはじめ、お香典の歴史についても解説します。

そもそもお香典返しとは

お香典返しとは、お通夜や葬儀の際、参列者様が故人様にお供えいただいたお香典へのお礼として、お返しをすることです。お香典には大切なご家族を失った遺族の方々の心に寄り添い、慰める意味が込められています。

またお香典返しは、お香典をお供えいただいた参列者様に対して、四十九日法要が無事執り行われた旨を連絡し、お礼をするために行われることが一般的でした。

お香典返しはいくら返せばよい?時期と金額相場を紹介

お香典返しを適切に行うためには、渡す時期と金額相場はどの程度が妥当なのか知っておく必要があります。それぞれについて解説するので、この機会に覚えてしまいましょう。

お香典返しの時期

お香典返しの時期は、四十九日法要が終わってから1カ月以内が一般的です。

お香典返しの時期は本来、仏式での葬儀を行った場合、故人様がお亡くなりになられてから
49日目に行われる満中陰法要や、神道ではお亡くなりになられてから50日目に行われる五十日祭など、忌明けの時期を目安にお返しします。

一方、キリスト教には忌明けと言う考え方が無いため、カトリックでは30日目の追悼ミサ、プロテスタントでは1か月目の昇天記念日を目安にお返しすることが多いようです。

法要を行い、無事に忌明けしたご報告も兼ねることから、法要にお越し頂いた方には当日に、そうでない方には法要が終わって数日後にお渡し・お届けができるように、お香典返しの品を準備しておきましょう。

なお、最近の葬儀では49日ではなく、当日のお香典返しを行うケース(当日返し)も増えています。

当日返しと後日返しについて

お香典返しは葬儀当日に行う当日返しと、四十九日法要の後に行う後日返しの2種類があります。

当日返しとは、お通夜や葬儀の際、お香典を持って来て頂いた参列者様に対して、一律で当日の内にお渡しする形式です。当日返しのメリットは、参列者が多いときなどは四十九日法要までにご家族が一人ひとりに何をお返ししようかと悩む心配がなくなる点が挙げられます。

また、参列時に直接お渡しするため、送り忘れや会葬帳などの記載漏れで送り先が不明になるといった心配が減ることも当日返しのメリットです。さらに、郵送にかかる送料も必要ありません。

一方、当日返しのデメリットは、一律で同じお香典返しになるため、金額に応じたお返しが難しい点でしょう。

後日返しとは、四十九日法要の忌明けの後、1カ月以内にお香典返しを郵送する形式です。後日返しのメリットは、ご遺族が落ち着いた状態でお返しの品を検討できる点や、お香典の金額に合わせたお返しができる点でしょう。

後日返しのデメリットは、お香典返しを実施する負担が重くなることです。参列者が多い場合は、品物の選定だけでなく、郵送の手間も発生するため、対応にはかなりの時間を要することでしょう。

お香典返しの金額相場

当日返しの場合、1万円までを対象に2,500円から3,000円程度のお香典返しをご用意することが一般的です。なお、お香典が1万円までの方はお渡ししたもので終了し、高額の方には満中陰の際、改めてお返しの品を郵送するケースもあります。

後日返しの場合は、頂いたお香典の半額でお返しする「半返し」が一般的です。例えば、お香典が1万円の場合は5,000円、3万円の場合は15,000円を目安に品物を準備する必要があります。

ただし近年は、半返しでは高額過ぎると考える方も多く、3分の1でお返しするケースが多くなっています。金額については、故人様との関係の深さや、今後のご家族とのお付き合いなどによって個別に検討するとよいでしょう。

お香典返しの掛け紙、のし、表書きのマナー

お香典返しには懸け紙とのし、表書きを付ける必要があります。それぞれのマナーを理解し、適切に対応できるようにしておきましょう。

掛け紙のマナー

慶事の際、贈り物に貼る紙が掛け紙です。お香典返しに使う懸け紙には、のしが付いていないものを用いることがマナーとされています。

お香典の懸け紙には「黒白結び切り」と呼ばれるものを使うことが一般的ですが、地域や宗派などによって、色や模様などが異なるため事前に確認しておくと安心でしょう。なお「結び切り」は一度結んだら二度と解けない「本結び」に由来しており、何度も繰り返すことが好ましくない弔事や婚礼の際に用いられます。

のしのマナー

お香典返しに付いている「のし」は、日本の贈答の特徴ともいえるもので、お祝いなどの贈り物をする際に付けるものです。

贈り物を紙に包んで、その上に紅白や黒白の帯紐(水引)をかけ、のしを貼り付けます。贈り物の包装紙の上からかける、結んだ紐が描かれた紙がのしと思われがちです。しかし、こちらはのし紙で、さまざまな形状のものがあります。

普段、お香典返しなどに使用されているものは、のし紙と呼ばれるものなので、勘違いしているケースが多いようです。近年、簡略化が進み、水引とのしが一緒に印刷されたのし紙を用いることが一般的であるため、混同しやすくなっています。

のしはもちろん、紅白の水引が描かれたのし紙も、お祝い専用であるため不要ですが、代わりに黒白の水引が印刷された弔事専用の紙を貼らなくてはいけません。「のしが不要である」と聞き、「包装紙の上から貼る紙も不要」と勘違いするケースもあるため気をつけましょう。送った相手方に対して失礼にあたります。

表書きのマナー

関西から西日本、北陸地方の一部地域では、黄白の結びきりとともに「満中陰志」と書かれた表書きを使用することがあります。

満中陰とは、49日の忌明けの日を迎えるという意味です。本来、お香典返しは忌明けの日に行うものであったため、その時期の名称をそのままとって表書きに満中陰志と書くようになったといわれています。

お香典返しの品物を贈呈する際、水引が付いた掛け紙に表書きを添えてから贈りましょう。水引と同様、表書きは仏式や神式など葬儀の際の宗教や、地域の習慣によって異なる場合があります。

なお、宗派や宗教に関係なく使用できるものが「志」です。志を記入する場所は、水引の結びきりの結び目の上部になります。下段の書き方は、喪主の姓名(フルネーム)や姓のみを記入することが一般的です。また「○○家」と記入することもありますが、その場合は喪主の氏名を記入しておきましょう。

お香典返しで注意したいマナー

適切なお香典返しの対応を行うために、会葬御礼との違いやご挨拶状、お礼状の書き方を解説します。

お会葬御礼との違い

お香典返しは会葬御礼と混同されがちなので、間違えないように区別する必要があります。

お香典返しは、参列者様が故人様へお供えいただいたお香典に対する返礼品です。したがって、お香典をお供えいただかなかった参列者様には渡す必要がありません。

一方、会葬御礼すべての弔問客に渡す品物です。お通夜や葬儀に来た、すべての参列者様に贈られます。会葬御礼の品物は、タオルやコーヒー、QUOカードなどの日用品が選ばれることが多いです。また、持ち帰ってもらうため、かさばらない品物を選ぶこともポイントだといえます。

お香典返しのご挨拶状、お礼状の書き方についてのマナー

香典返しを贈る場合、お香典に対する感謝と、忌明けの報告を実施するために、ご挨拶状やお礼状を添えることが一般的です。ご挨拶状やお礼状の文面は、掛け紙や表書きと同様、宗派によって違いがあるため注意しましょう。

個人との続柄は仏式が「亡」、キリスト教式、神式・天理教式では「故」を使います。故人様がお亡くなりになったことを表現する言葉としては、仏式が「死去」、キリスト教式は「召天」、神式・天理教式では「五十日祭」を使うことがマナーです。

また、法要名は仏式が「四十九日法要」、キリスト教式は「記念会」、神式では「帰幽」、天理教式では「出直し」を用います。

お香典返しに相応しい品物

お香典返しの品物は、不祝儀事を残さないという意味合いから、あまり手元に残らないお茶や海苔、最近では洋菓子などが選ばれるケースが多いです。また、洗剤や入浴剤などもよく選ばれます。

当日返しの場合は、参列者様に重いものを持って帰って頂くのは大変なので、洗剤など軽い品物を選ぶケースが多いようです。最近では、参列者様の自宅へ金額に応じたカタログを送り、好きな商品を選んでいただくカタログギフトなどもあります。

一方、お香典返しに相応しくないといわれる品物は、生肉や生魚などです。地域の風習や宗教上の理由から避けられています。また、お祝い事のお返しとして使われることが多い、昆布や鰹節なども避けたほうがよいでしょう。

近年、新型コロナウイルスや核家族化が進行する影響で、お香典返しのスタイルも変化しつつあります。家族だけで葬儀を行うためお香典は辞退するが、「お通夜や葬儀に来ていただいた方には何かお渡しをしたい」というケースや、1家族に1つずつお持たせのような形で渡すケースも増えているようです。

お香典返しを辞退されたときのマナー

参列者様の中には、ご遺族を気遣いお香典返しを辞退される方もいらっしゃいます。

この場合は、参列者様の御意向をくみ取り、お香典返しは控えましょう。ただし、忌明け法要の際、お礼状を送付して感謝の辞を述べることがマナーです。

また、身内でない方が、お香典返しを辞退された場合は、お中元やお歳暮などで贈りものをすることもひとつの方法でしょう。

お香典返しの歴史

お香典に関する知識を深めてもらうために、お香典の歴史について紹介します。

お香典の語源

香典はかつて「香奠」と書かれていました。「奠」という字は訓読みで「まつる(祀る)」と読めますが、多くの方が認識されているとおり「香を供える」という意味です。

この意味から転じて「香典」「香資(こうし)」「香料」とされるようになってきました。民俗学者や宗教学者の間では、この発生に関して諸説ありますが、お墓に香花(樒)を捧げたことに由来するのではないかといわれています。

室町時代後期には、武士が金銭にて香奠を出したとの記録があるようです。しかしその頃は、貨幣による経済が未発達だったため、農村部などにおいては、専ら香奠として米などの食料を持ち寄っていました。

そのような時代が長く続き、貨幣経済が発達して庶民の生活スタイルが変わり始めた明治期、多くの都市部において金銭での香奠が一般的になったようです。ただし地方では、まだあまり普及しておらず、大正期から昭和初期にかけて徐々に金銭での香奠が普及していきました。

食料をお香典にしていたことも

お香典といえば紙幣を贈ることが当然ですが、地域によっては大量のお供え物(食料)などをするケースもあり、戦前までの香奠習慣の名残といえるでしょう。現在のような金銭香典より以前は、食料を香典とした時代があったと紹介しましたが、仏教的にお香が「仏様の食べ物」とされており、それが転じて食料になったという考えもあります。

実際、葬儀の席における食事の振る舞いが盛んに行なわれていたことから、その助けになると、香典が食料になったことに起因するようです。葬儀の期間、喪家の地域に住む人々は、子供も含めて自分の家では食事をせず、喪家の振る舞いに与っていたという記録もあります。

喪家では故人の成仏を願い滅罪する為の布施として、親戚や地域の人に食事を振舞いました。現在でも、食事の席に親戚やお世話方を連ねるのはこのためです。

振る舞い用に多量の食料を必要とするため、親族(親戚)はたくさんの食料を提供しました。
これが「親族香典」です。

昔は、忌み(神に対して身を清め、穢れを避けて慎む事)の観念が強かったため、故人の血縁の近しい親族ほど、その食料の量が多かったといわれています。また、地域の人々は自分達が食する分だけの食料を持ち寄りました。これが地域や近しい方々である、会葬者の香典です。

現在でも親族と会葬者の一般的な香典の額が違うのは、これに由来します。また、現在でもそうですが、近所の方々は葬儀の為の多大な労力を提供していましたが、これを香典とする考えもあったようです。

葬儀を出すと親戚・近隣の人に振る舞いをしなければなりませんでしたが、これは多額な出費でした。喪家や親族の負担は大きく、経済的に厳しい家では、葬儀を出せないケースもあったようです。

香典はそうした状況に対する相互扶助としての意味を持っていました。今でも、かつて自分の家で葬儀を出したときの香典帳が保存されており、他の家で葬儀があると、前にいただいた金額と同等の香典を贈ることが一般的です。

その意味では、香典は地域社会における義理のひとつであり、義理を返すことが相互扶助精神の表れなのかもしれません。

まとめ

お香典とは、本来お香典には「扶助」の意味があります。働き手である一家の主が亡くなってしまったら、生活が大変になるかもしれません。そんな困った状態のときに、少しでも役に立ててくださいとう意味合いが込められているのでしょう。

最近では葬儀形態や返礼品、参列される人数など、さまざまな点において変化がみられます。
しかし、葬儀に来てくれて「ありがとう」という気持ちや「お世話になりました」というような気持の部分は、人と人の関わりという点において、とても大事な部分だと思います。

我が国に昔からある「お互いを思いやる気持ち」が「お香典」や「お香典返し」という形となって現れているのかもしれません。できるだけ今後の世の中にも残していきたい「思い」のカタチだといえるでしょう。