自分の宗派がわからない!5つの調べ方や宗旨の違いなどを解説

2022.10.04

仏教にはたくさんの宗派があります。ご自身の宗派をご存じでしょうか?「昔、お葬式のときにお坊さんが来てくれた記憶はあるけど、宗派までは分からない……」という方も多いかもしれません。

葬儀は宗派に則って儀式を行うため、打合せの際には宗派の確認が必要です。また、葬儀を行うときだけでなく、先祖供養全般においても大切な問題といえるでしょう。

そこで今回は、宗派の調べ方とおもな仏教の宗派について解説します。

宗派とは

宗派とはある宗教の分派のことです。例えば、仏教であれば天台宗や浄土宗などが、宗派といえます。

宗旨と宗派の違い

宗派と混同されがちな言葉に宗旨があります。宗旨とは、自身が信仰する宗教のことです。
仏教やキリスト教、イスラム教などが宗旨に該当します。そして、これらの分派となるものが宗派です。

宗派がわからないと困ること

人々の価値観やライフスタイルが変化したことによって、お寺離れが加速しており、自身の菩提寺がどこか分からない方も増えています。そのため、自身がどの宗派なのか分からない方は多いようです。

お葬式のやり方は宗派によって異なります。そのため、事前に故人様の宗派が分からないと非常に困るでしょう。また、檀家用のお墓に故人様のご遺骨を納める場合は、他の宗派で葬儀を行ってしまうと、お寺によっては埋葬できなくなる可能性があるため注意しましょう。

自分の宗派がわからないときの調べ方は5つ

昔から受け継がれてきた家の宗派を調べるにあたって、いくつかの方法を紹介します。

1.親戚に聞いてみる

1つ目の方法は、親戚に聞いてみることです。昔は今よりもお寺との付き合いが親密でした。そのため、自分では宗派が分からなかったとしても、年配のご親戚であれば宗派を把握している可能性があります。

父方の兄弟姉妹をはじめ、ご親戚などに聞いてみましょう。なお結婚により、父方が母方の姓に変更している場合は、母方の宗派に合わせます。

2.菩提寺に確認する

菩提寺に確認してみるのも、ご自身の宗派を調べるひとつの方法です。まず「どこのお寺」「お墓はどこにあるのか」「親の葬儀の際にどこのお寺に依頼したか」が分かれば、宗派を特定しやすくなります。

先祖代々お付き合いをしているお寺(菩提寺)がある場合は、そちらに確認してみましょう。近年はホームページを作成しているお寺もあるため、インターネットで調べることも可能です。

3.仏壇を確認する

仏壇に祀られているご本尊は宗派によって異なるので、宗派を見つける大きな手がかりになります。ご本尊がどの宗派のものか判別できない場合は、葬儀会社や仏具店などに相談してみるとよいでしょう。

もちろん、お葬式の杉浦本店でも宗派を判断するためのサポートを行っているので、お気軽にご相談ください。

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4.位牌を確認する

位牌を確認することで、宗派が分かる場合もあります。位牌に書かれた故人様のお名前(戒名・法名・法号)の上に、見慣れない文字や漢字が描かれているのを見たことがある方は多いでしょう。

これは梵字(ぼんじ)と呼ばれるもので、それぞれの宗派が祀るご本尊を表しているため、宗派を特定しやすくなるのです。

5.先祖の戒名を確認する

戒名(法名・法号)のつけ方も、宗派によって特徴があります。どのような文字が入っているのか、確認してみましょう。ただし、ご自身では分からない可能性があるため、その場合は葬儀会社などに相談してみるのがおすすめです。

仏教の宗派

現在、仏教の中で大きな宗派として存在しているのは、以下13の宗派です。それぞれの宗派の特徴を確認しておきましょう。

奈良仏教系の宗派

法相宗

法相宗(ほっそうしゅう)とは、慈恩大師を開祖とする奈良仏教系の宗派です。法相宗の大本山は、興福寺と薬師寺で、ご本尊は特に決まっていません。

法相宗では、阿頼耶識(あらやしき)や末那識(まなしき)と呼ばれる深層意識に注目し、「ヒトが認識しているものはすべて自身が作り出したものだ」という教えを説くことが特徴です。

律宗

律宗とは、鑑真によって伝えられた奈良仏教の宗派です。本山は唐招提寺で、教典には四分律、梵網経、法華経などが用いられます。律宗は仏教を深く研究することが特徴の宗派です。

戒律を重んじる律宗では、戒律への理解を深めることによって、悟りが開かれると説いています。

華厳宗

華厳宗(けごんしゅう)は杜順を開祖とする、本山は東大寺に持つ宗派です。華厳宗の教えは華厳経学と呼ばれ、四種法界という思想や哲学を信仰しています。

華厳宗の深い影響を受けた聖武天皇が、奈良の大仏として知られる廬舎那仏(るしゃなぶつ)を建立したことは、非常に有名な話です。

密教系の宗派

真言宗

真言宗とは空海の教えを受け継ぎで、大日如来をご本尊とする宗派です。真言宗では「即身成仏」と呼ばれる、仏と同じように行動し心を清く保てれば、誰でも仏になれるという教を説いています。

真言宗のご本尊は大日如来です。

また、真言宗の梵字は「ア」で、大日如来という意味です。

なお、真言宗については以下の記事でも詳しく解説しているのあわせてご確認ください。

関連記事:「真言宗の教えやお経とは?葬儀の流れやマナーも解説」

密教・法華系の宗派

天台宗の密教は台密(たいみつ)と呼ばれる。天台宗では顕密一致といって密教と顕教を同格に扱う。

天台宗

天台宗とは、天台大師智顗(ちぎ)が開いた仏教の宗派です。平安時代に遣唐使であった最澄が、日本へ広めたといわれています。天台宗の教えは、万民すべてが仏になれると説く法華一乗です。

天台宗の本尊は釈迦如来が基本です。ただし、阿弥陀如来を祀る場合もあります。

上記、天台宗の梵字は「キリーク」と読み、阿弥陀如来という意味です。

一方、上記梵字は「ア」と読み、大日如来を意味します。

天台宗については、以下の記事でも解説しているので参考にしてみてください。

関連記事:「天台宗とは?起源や教え、葬儀を紹介」

法華系の宗派

日蓮宗

日蓮(日蓮聖人)が開祖である日蓮宗では、お釈迦様の心ともいわれる法華経の教えを説く宗派です。中でも「南無妙法蓮華経」は功徳のすべてであると、もっとも重要視されています。

日蓮宗のご本尊は、十界曼荼羅か釈迦牟尼仏、あるいは三宝尊のいずれかが多いです。なお、日蓮宗では「戒名」のことを「法号」と呼びます。

法号の頭に「妙法」と付いていれば、日蓮宗です。日蓮宗では戒名の中に「日」という字を入れることが多く、男性は「法」女性は「妙」が入っていれば、日蓮宗で間違いありません。

浄土系の宗派

浄土宗

浄土宗は法然上人を宗祖とする宗派です。阿弥陀仏による平等の慈悲を信仰し、「南無阿弥陀仏」を唱えることで、極楽浄土に生まれることを願います。

浄土宗のご本尊は阿弥陀如来です。

上記梵字は「キリーク」と読み、阿弥如来を意味します。浄土宗では、戒名の頭に阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」を入れる点が特徴です。「○○院○誉○○○○居士(大姉)」など、戒名の中に「誉」という文字が入っていれば、浄土宗である可能性が高いでしょう。

浄土真宗

浄土真宗とは、法然の弟子である親鸞が開祖の宗派です。阿弥陀仏が万人を救済してくれるという教えを説き、信心さえあれば必ず成仏できる考えられています。

浄土真宗のご本尊は、阿弥陀如来(阿弥陀仏)です。上記は浄土真宗本願寺派、本山西本願寺のものとなります。

上記は、真宗大谷派の本山東本願寺のご本尊です。浄土真宗東西の判別は、お仏壇の阿弥陀如来の掛け軸で判別できます。上辺に届いている後光の数が8本だと「西」、6本だと「東」です。

浄土真宗は「戒名」のことを「法名」と呼びます。梵字は用いません。法名について、男性は「釋」「釈」、女性は「釋尼」「釈尼」をつけるのが特徴です。例えば「釋○○、釋尼○○」などが挙げられます。しかし現在では、女性も男性と同じ「釋」とつけるケースもあるようです。

融通念仏宗

融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)良忍上人が平安時代の末期にはじめた、念仏勧進の仏教宗派といわれています。融通念仏宗では、念仏が融合することによって大きな力を生むと説くことが特徴です。

融通念仏宗のご本尊は、十一尊天得如来(じゅういっそんてんとくにょらい)です。

時宗

一遍上人が開祖の時宗は、阿弥陀仏を本尊とする宗派です。他力念仏と呼ばれる考えと、踊り念仏に特色があります。浄土宗の一派である時宗では、南無阿弥陀仏の念仏を唱えます。

禅系の宗派

臨済宗

臨済宗とは、臨済義玄(りんざいぎげん)を開祖とする禅系の宗派です。自力と呼ばれる座禅によって悟りを開く考えのもと、誰もがお釈迦様と同様に人の尊さを実感できるという教えを説いています。

臨済宗では、特定のご本尊はありませんが、釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)を祀る場合が多いです。

臨済宗においては、戒名の頭に釈迦如来を表す梵字「バク」を入れる場合があります。

また、悟りの境地を意味する「空」が入ることもあるので覚えておきましょう。

曹洞宗

洞山良价(とうざんりょうかい)が開祖である曹洞宗も、座禅を主とする宗派です。お釈迦様の修行に倣い、ひたすら座禅を続ける「只管打坐(しかんたざ)」に大きな特徴があります。

曹洞宗のご本尊は、釈迦牟尼仏です。梵字も臨済宗と同じになります。

黄檗宗

黄檗宗(おうばくしゅう)とは隠元禅師が開祖の宗派です。「唯心の浄土・己身の弥陀」という教えが根本であり、この世にあるものは、すべて心の中にある物であると説いています。また、仏様も例外でないと説いている点が特徴です。そのため、黄檗宗では自身の中に仏性を見出すことが目的とされています。

黄檗宗のご本尊には、お釈迦様を祀るのが一般的です。

無宗教になる場合は注意が必要

葬儀の打合せの際、「宗派も分からないし特別な信仰心もないので、無宗教でいいだろう」と安易に決めてしまうと、後になってトラブルに繋がる可能性があるため注意しましょう。

葬儀はご遺族だけではなく、その他のご親族や参列者などが故人様とお別れをし、やすらかな旅立ちを祈る場です。無宗教形式や宗派にこだわらない葬儀を行う場合は、ご親族などから苦情を言われることも考えられますので、その場合は理解を得る必要があります。

特に菩提寺や信仰している宗派のお寺に納骨堂やお墓がある場合は注意しなくてはいけません。宗派の形式で葬儀を執り行って戒名をもらっていないと、お寺の納骨堂やお墓へ納骨できない場合があります。

宗派が分からないといって無宗教葬にするのではなく、故人様やご遺族の気持ちを確認し、ご親族やお寺などへ宗派の確認をとってから検討しましょう。

まとめ

かつて埋葬先は先祖代々の墓が普通であり、そのお世話や法要は各代の主人が行うことものとされていました。そのため、自分の宗派が不明という事態は起こりようもなかったのです。

跡継ぎという概念が消滅しつつある昨今は、ご家族の葬儀行う際に「うちは何宗?」という疑問に直面するという事例もよくあります。現代において、親と子はあくまで個別に独立しており、親と同じことを子が引き継ぐ義務はありません。しかし、家の宗派を知ることは、自分という存在が親から子へと続いてきた、一連の大きな流れの中にある感覚を与えてくれるよい機会となるでしょう。

日頃、家の中で目にしている仏壇の中やお墓参りに行った際などに、梵字を探してみたり、お寺でご本尊を眺めてみたりすると、今までとは違った見え方がして面白いかもしれません。

大切な方を失くし、気持ちが落ち着かない状態のまま、葬儀の打合せを迎えます。もしものときに慌てないよう、ご自身の宗派は事前に調べておくのがおすすめです。