自宅葬とは?メリット・デメリットや家族葬との違いなども解説

2022.10.05

故人様の自宅で執り行う葬儀が自宅葬です。自宅葬は、故人様が長い間住んだご自宅で最期の時間を過ごせるため、昔はよく実施されていました。しかし近年は、住宅事情や核家族が増えたことによって、自宅葬を実施する方は減少傾向です。

自宅葬は通常の葬儀とは違うメリットがある反面、デメリットや実施時の注意点もあるため、実施を検討する方は事前に把握しておくべきでしょう。ここでは、自宅葬がどのようなものなのか、メリット・デメリットや家族葬との違いなどについて解説します。

自宅葬とは

自宅葬とは、故人様が長年住まれたご自宅で、お通夜と葬儀を行うことです。

家族葬が幅広い意味を持つことと同様に、自宅葬もまた幅広い意味を含んでいます。自宅に僧侶を招き、通夜・葬儀を行うことも自宅葬です。一方、お通夜は行わず、葬儀だけ行うことも自宅葬だといえるでしょう。

もちろん、僧侶をご自宅に招かない場合も自宅葬です。ご家族だけでお別れをして、火葬場へ出棺することも自宅葬といえます。

細かくいえば、ご自宅でお別れだけをして火葬場へ出棺するものは火葬式です。両者の端的な違いは「祭壇を出すか出さないか」といえるでしょう。

前者は自宅葬で、後者が火葬式です。どちらも大切な方をお送りする形に変わりはありませんが、葬儀社では「自宅1日葬プラン」や「自宅火葬式プラン」など、さまざまな葬儀プランが用意されており、それぞれ料金が異なります。

ちなみに、伊丹十三監督の映画「お葬式」は自宅で行う2日間の葬儀なので、プラン的には「自宅2日葬プラン」といえるでしょう。

自宅葬と家族葬との違い

家族葬とはご家族やご親戚など、近親者のみで行う葬儀のことです。家族葬は必ずしもご自宅で行うわけではなく、葬儀場で行う場合もあります。そのため、ご自宅で行う家族葬は、広義な意味において自宅葬といえるのです。

自宅葬を行う方の割合

近年、自宅葬を実施する方は少数派といえます。

上図は葬儀をする場所の割合です。1999年と2014年を比べると、葬祭ホールで葬儀を出す割合は増えているのが分かります。一方、自宅葬は4割近かったものが減少し、6%程度にまで減少している状況です。

出典:ENDING DATEBANK/自宅葬の割合

2017年になると、自宅葬を実施する方は、5.3%程度まで減少しているので、さらにレアケースになっていることが分かるでしょう。ただし、これらはあくまでも全国平均なので、実際は地域によって大きく変わる場合があります。

地域によっては家族葬の割合が高い場合もある

「新聞お悔やみ欄を集計した各都道府県の葬儀の場所の分類」では、2010年に自宅葬の割合が高いランキングは、以下の通りです。

新聞お悔やみ欄集計
都道府県別葬儀の場所(2010年1月)

自宅葬の割合
1位:秋田県27%
2位:奈良県14%
3位:香川県10%
4位:青森県7%
5位:福井県7%

10年ほど前でも、秋田県では27%程度が自宅葬だったようです。新聞のお悔やみ欄を使用していない葬儀も合わせると、実数はさらに多いでしょう。都心から離れた農村部では、大家族で自宅は大きいことが多く、広いスペースを必要とする家族葬の実施に適しています。

また、助け合いの意識が強く、近所付き合いをとても大切にしている点も特徴です。自宅葬はご近所の方も参列しやすいので、わざわざ葬祭ホールを使う必要がありません。こうした土地柄であるために、葬祭ホールの進出が遅れ、現在でも自宅葬の割合が高いのでしょう。

近年再び注目を集める家族葬

このままでは絶滅してしまいそうな自宅葬ですが、最近は喪家様と葬儀相談をする中で、神奈川県(横浜・川崎)において自宅葬が静かに注目されつつあるように感じます。

都心部において自宅で葬儀をするのは、スペース的な問題が多く、難しいとされてきました。しかし、ここ10年で葬儀の規模はどんどん縮小し、ご近所・会社関係まで参列する従来の一般葬から、家族・親戚が主体の家族葬の割合が増えてきているのは周知の事実でしょう

さらに、未曽有のパンデミックである新型コロナウィルスの影響により、少人数の葬儀を選ぶ方が増え、ご親戚も呼ばない家族主体の葬儀も目立つようになりました。家族主体であれば、遠くの葬祭ホールではなく、住み慣れたご自宅で葬儀を行うという選択肢も十分あり得ます。

このような葬儀の小規模化により、近年自宅葬が再び注目を集めているのです。

自宅葬のメリット

自宅葬には、一般葬では得られないメリットがたくさんあります。代表的な自宅葬のメリットを確認しておきましょう。

故人様が住み慣れたご自宅でお別れできる

自宅葬であれば、住み慣れたご自宅で最期の時間を過ごせるため、葬儀会場よりもゆっくりと故人様とお別れができる点は大きなメリットです。葬祭ホールでは「お通夜は〇〇時まで、消灯時間は〇〇時」など、時間が決められていることに対し、ご自宅であれば制限はありません。ご家族のペースで、ストレスなく故人様とのお別れに専念できるでしょう。

闘病による入院生活が長かった故人様の、最期は自宅に帰りたいという願いも叶えられます。また家族葬の場合、ご近所の方は呼ばないかもしれませんが、長年お付き合いのあった方が「お焼香だけでも」と弔問に来られるケースは多いようです。

葬儀会場の費用がかからない

自宅葬の会場は自宅なので、葬儀会場の費用は不要です。また、ご自宅に設置する祭壇も小さなものでよいので、その他の費用を安価に抑えられる点もメリットだといえます。そのため、費用をお花代やお食事代などに充当しやすいでしょう。

葬儀の形式を自由に選べる

自宅で行う家族葬は、葬儀会場のようなルールに縛られる必要がないため、自由な形式の葬儀を行える点がメリットです。故人様や喪主の意見を、葬儀に反映させやすいでしょう。

参列者や葬儀の時間、料理の内容など、自由な形式で実施できます。もちろん、ご近所の方も参列しやすいので、温かい雰囲気のアットホームな葬儀をしたい方にも、自宅葬はおすすめです。

自宅葬のデメリット

自宅葬はご自宅で実施する性質上、どうしても運営するご遺族の負担が重くなります。自宅葬の実施を検討する場合は、以下のデメリットがあることを理解したうえで判断しましょう。

近隣住人の迷惑になる場合がある

自宅葬では、参列者がご自宅に多数訪れるため、近隣住人の迷惑になる場合があります。葬儀中はもちろん、その前後は騒がしくなる可能性があるので、ご近所への事前挨拶は必須でしょう。

また、近所の方が尋問に来てしまう可能性もあります。追い返すわけにはいかないため、柔軟な対応が求められるでしょう。

ご家族の負担が重い

家族葬における最大のデメリットは、ご家族の負担が重いことです。会場を設営するために、一時的に家具を移動したり、葬儀中は居住スペースが縮小されたりします。

大切なご家族を亡くした悲しみの中、葬儀の設営と運営をしなくてはいけないため、ご家族の負担はかなり重いでしょう。

参列者が多いと費用は高騰する可能性がある

参列者が多い場合は、庭にテントや幕を張る必要があります。ときには、葬祭ホールを借りるのと同じくらいの費用がかかる場合もあるでしょう。また、式場利用料は不要ですが、高額な設営費がかかる場合はあるため注意しなくてはいけません。

自宅葬の流れ

自宅葬の流れは、一般的な葬儀とそれほど大きく変わりません。葬儀会社に依頼する場合としない場合について解説します。

葬儀会社に依頼するケース流れ

自宅葬を行うおおまかな流れは、以下の通りです。

・葬儀会社に連絡して、故人様のご遺体をご自宅へ搬送・安置してもらう
・葬儀会社のスタッフと葬儀に関する打合せを実施

自宅葬の場合、ご自宅という限られたスペースで葬儀を行う必要があるため、参列者の人数に応じた導線や式場の入念な調整が必要です。葬儀会社のスタッフと十分に相談し、万全の体制で臨みましょう。

葬儀会社へ依頼しないケースの流れ

葬儀会社に依頼せず、ご家族だけで自宅葬を行うという選択肢もあります。しかし、ご遺体の搬送や安置はもちろん、葬儀や火葬に関するさまざまな調整をすべてご家族が行う必要はあるため、現実的な方法とはいえません。

自宅葬を行うときの注意点

自宅葬を滞りなく行うために、以下の注意点に留意しましょう。

自宅葬の対応可否を葬儀会社に確認

まず葬儀会社が、自宅葬を受けてくれるかどうかを確認しましょう。葬儀会社によっては、自社ホール以外での葬儀を請けないところもあるからです。

葬儀会社が受けてくれた場合でも、ご自宅で葬儀をすると高額な「式場設営費」がかかる可能性はあります。しっかり見積をとってから決めましょう。

参列者が車で来る場合は諸所の調整が必要

自宅葬では、駐車場が問題になることが多いです。ご自宅の駐車場で間に合わない場合は、近隣のコインパーキングを探しておきましょう。僧侶も車で来ることが多いです。

駐車場が間に合わない場合は、路上駐車になる可能性があります。葬儀後も円満なご近所付き合いをするためにも、近隣住民に対して「ご迷惑をおかけします」と一言挨拶しておくようにしましょう。

また、多くの参列者が見込まれるときには、最寄りの警察署にも伝えておくのが賢明です。大目に見てくれるわけではありませんが、近隣から苦情が出た際、届け出を出していれば警察官の心象に変化が期待できるでしょう。

ご自宅の電圧は十分か確認が必要

自宅葬で多くの参列者が集まると、エアコンなど空調がフル稼働になります。また、最近は花祭壇ですが、昔は白木祭壇がメインでした。白木祭壇には、六灯や輿などで明かりを多く使用するため、エアコンなども合わせると電力不足になる可能性が高いでしょう。

事前に電力会社に申し出て、アンペアを上げてもらいましょう。実施しなかった場合、お通夜中などにブレーカーが落ちる事態も想定されるため、事前の手続きは必須です。

ご自宅の片づけが必要

自宅葬の参列者がお焼香にいらっしゃる際、当然ご自宅の中を見られてしまいます。そのため、最低限の片づけが必要です。

自宅葬が終わると、火葬場へ出棺となります。このとき、参列者全員で行く場合は注意しなくてはいけません。出棺後、空き巣被害にあう可能性があるからです。出棺後の片づけもあるため、可能であれば留守番はいたほうがよいでしょう。

自宅葬が向いているケース

自宅葬のメリット・デメリットを踏まえると、以下のような方に向いているといえます。

・参列者も少なく家族だけで見送りたい
・予算をできるだけ抑えたい
・故人様が望んだ形で最期の時間を過ごしたい
・温かくアットホームな雰囲気で葬儀をしたい

自宅葬はご家族の負担が大きい反面、安価かつ自由な形で葬儀が行えます。故人様やご家族の想いを葬儀に反映させやすいので、ご自宅に十分なスペースがある場合、検討してみる余地は十分あるでしょう。

まとめ

現在は少数派の自宅葬も、その良さが見直されてきています。また「葬儀は時代を映す鑑」とも言われますが、コロナ禍を経たことによって、ますます時代の流れにマッチしており、今後も自宅葬は増えることでしょう。

もちろん葬儀を行うために建てられた葬祭ホールに比べ、利便性ではかないません。しかし「住み慣れた我が家で葬儀をできる」ことは、何物にも代えられません。

自宅葬を請けない葬儀会社や設営費が驚くほど高額になるケースも残念ながら存在します。大切な方をお送りするため、後悔しないよう事前相談をするのがおすすめです。

横浜市や川崎市で自宅葬を行う際には、実績豊富な弊社お葬式の杉浦本店にご相談ください。横浜市、川崎市における多くの葬儀実績があるので、故人様やご家族、ご親族の気持ちに寄り添った葬儀プランをご提案いたします。創業130年の信頼と安心が自慢です。24時間365日いつでもお気軽にお問い合わせください。

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