喪服の意味とは?種類や歴史について紹介

2022.05.26

お通夜やお葬式で着用する喪服。なんとなく黒の礼服を着るイメージが強いと思いますが、大昔は白い服を着ていたこともあったそうです。

また、現在の喪服は格式によって3つの種類にわけられていることをご存じでしょうか?

そのため、TPOに応じて適切なものを着用することがマナーとして求められます。しかし、喪服は頻繁に使用するものではないので、正しい知識を持っている方は少ないでしょう。

そこで今回は、喪服の意味や種類、歴史などについて解説するので、この機会に見識を深めてみてはいかがでしょうか。

喪服の意味

喪服がどのようなものか理解してもらうために、喪服の意味や男女ごとの服装、礼服との違いについて解説します。

喪服とは

喪服とはお通夜やお葬式など、葬儀に参列する際に着用する衣服のことです。喪服には、故人様のご家族やご遺族が「喪に服す」という意味が込められています。

一般的には、黒いスーツやワンピースを喪服として使用することが多いです。ただし、ビジネススーツなどの黒と喪服の黒は若干色味が異なる場合があるため、参列時に浮いて見える可能性があります。そのため、購入の際には色味には注意しましょう。

また、喪服は故人様の死を弔うために着用するものなので、華美なものやカジュアルなもの、肌の露出が多いものは避けなくてはいけません。

男性の喪服

男性の喪服は、ブラックスーツを着用することが一般的です。黒や紺など地味めな色のネクタイを締め、時計やアクセサリーは着用しないことがマナーとされています。ただし、結婚指輪に関しては、はめていても問題はありません。

なお「死を繰り返す」という意味あいから、ダブルのスーツは避けるべきだと考える方もいるようですが、こちらについてはあまり気にすることはないでしょう。

女性の喪服

女性の喪服は、黒や紺などの地味なワンピースやツーピースを着用することが多いです。男性と同様、時計やアクセサリーの着用は避け、化粧も薄めにしておきます。

なお、結婚指輪やパールのネックレス、イヤリングの着用であれば問題ないとされていますが、複数の着用はさけたほうが無難です。

喪服と礼服の違い

喪服と礼服は混同されることが多いですが、厳密には違うものです。

喪服は前述した通り、お通夜やお葬式など葬儀の際に着用する衣服ですが、礼服は冠婚葬祭への出席時に着用するものとされています。つまり、喪服は礼服の一部という位置づけで、葬儀の場に特化して着用する衣服といえるでしょう。

結婚式や式典などの場に着用するフォーマルなスーツなどが、一般的な礼服の事例です。

喪服の種類(格式)は3つ

喪服は葬儀に関わる立場に応じて、着用する種類(格式)が変わる点が特徴です。正喪服、準喪服、略喪服の3つについて、それぞれどのような喪服なのか解説します。

1.正喪服

葬儀の際、喪主とご遺族は正喪服を着用することがマナーといわれています。しかし近年は、着用する方が減少傾向です。なお、参列者が制喪服を着用すると、喪主やご遺族よりも格式が高くなってしまう可能性があるため避けましょう。

男性の制喪服は黒のモーニングが基本とされていますが、華美なものではなく控えめな印象のものを選ぶ必要があります。そのため、シャツは白のレギュラーカラーのものを選び、ネクタイやベスト、靴下、サスペンダーなどは黒で統一するのが基本です。ただし、モーニングは昼間に着用するものなので、お通夜には着用しないようにしましょう。

和装の場合は、紋付羽織袴を着用します。紋付羽織は黒の羽二重で、背中と両袖、両胸の5か所に家紋が付いたものを着用しましょう。なお、袴や羽織の紐の結びかたが慶事と葬儀では異なるため、事前に確認しておく必要があります。

一方、女性の正喪服は黒のワンピースやスーツ、アンサンブルなどが基本です。ただし、華美にならないよう、装飾が多いものや光沢のあるものは避けましょう。また、肌の露出がなく、ボディラインが出ない、襟のつまったシンプルなデザインのものを着用します。

袖やスカートは長めのものを選び、ストッキングは黒の無地を選びます。また、スーツの際に着るシャツは白ではなく黒を着用しましょう。

和装の場合は、黒の無地に5つの家紋を染め抜きにした着物を着用します。帯や帯揚げ、帯締めは黒の無地で統一し、襦袢と半襟、足袋は白を着用するのが基本です。また、華美にならないようにするため、髪飾りや帯留めは着用しません。

2.準喪服

準喪服とは、一般的な喪服のことです。おもにお葬式の参列者が、準喪服を着用します。

男性の準喪服は、ブラックスーツが基本です。ただし、いわゆるビジネススーツではなく、喪服や礼服として販売されているものを選びましょう。形はシングル、ダブルどちらでも構いませんが、スリーピースの場合はベストも黒で揃えなくてはいけません。

シャツはレギュラーカラーの白、ネクタイは黒の無地でネクタイピンは付けないようにします。靴下と靴は黒で統一し、光沢のないものを選択しましょう。

女性の準喪服は、正喪服と同じ黒のワンピース、スーツ、アンサンブルで、控えめなデザインのものを着用することが一般的です。スカートは長めのものを着用し、インナーは黒で統一します。ただし、素材については、華美でなければレースやベロアなどでも問題はありません。また、ストッキングと靴も黒で統一します。

3.略喪服

略喪服とは黒の略礼装で、仮通夜やお別れ会、送る会、偲ぶ会、三回忌以降の法要などに着用するものです。お別れ会や法要などで「平服でお越しください」といわれたときには、普段着ではなく略喪服を着用します。

急に発生する仮通夜に際しては「あらかじめ死の準備していた」という意味を避けるために、略喪服を着ることがマナーです。

男性はダークスーツ、女性は暗めのワンピースやスーツなどを準喪服として着用することが一般的でしょう。ただし、あくまでも喪服なので、カジュアル過ぎるデザインのものは避ける必要があります。

喪服の歴史

喪服に対する見識を深めるために、歴史を紐解いていきましょう。喪服の起源から現在に至る歴史を簡単に紹介します。

奈良時代から明治初期

喪服の起源は、奈良時代といわれています。日本書紀には喪服に関する記載があり、当時の葬儀では故人様のご親族や参列者は、白い喪服を着用することが一般的だったそうです。それ以降の1,000年程度の期間、庶民の間では喪服は白とされてきました。

一方、上流階級においても当初は白い喪服を着ることが一般的でしたが、718年の「養老喪葬令」で当時の天皇が薄墨色の細布衣を喪服として着用したことをきっかけに、黒い喪服が広がっていったそうです。

平安時代は黒い喪服を着用することが多かったようですが、その後の室町時代になると貴族の影響力が薄れたことから、白い喪服を着る方が増えました。

明治初期から昭和初期

明治時代に入り、1878年に大久保利通が暗殺されます。列強からの注目が集まる彼の葬儀に際し、政府から参列者に黒い喪服を着用するように通達がありました。また、当時の皇室で行われた葬儀に参列した欧米の賓客が、こぞって黒い喪服を着用していたことから、日本人の参列者にも黒い礼服の着用が命じられたそうです。

これ以降、上流階級の間では黒い喪服がスタンダードになっていきます。さらに1915年には、宮中参内における喪服も黒に統一されました。

第二次世界大戦から現在

明治末期から昭和初期にかけては、庶民の喪服は未だに白いままでした。その後、第二次世界大戦をきっかけに、庶民の喪服も黒へと変わっていきます。

当時の喪服は貸衣装屋で借りることが一般的で、白いものと黒いものの両方が準備されていました。しかし、戦時中死者が増えて喪服の使用頻度が増加し、白では汚れが目立つため黒い喪服を準備する貸衣装者が増えたそうです。

また、欧米諸国の影響などもあり、庶民の間にも黒の喪服が徐々に広まっていきました。そして、第二次世界大戦の終戦以降は、葬儀の際、貴族だけでなく庶民も喪服を着ることがマナーとして定着しはじめ、日本中に黒い喪服を着用する習慣が定着したのです。

まとめ

喪服には格式に応じて正喪服、準喪服、略喪服の3種類を使い分ける必要があります。大人のたしなみとして、正しい知識を身につけておきましょう。また、万が一の場合に備えて、今回紹介した内容を参考に、すべてのパターンの喪服を準備しておくと安心です。

もし、どのような服装を準備したらよいかわからない場合は、ご親戚や葬儀会社のスタッフなどに相談するとよいでしょう。ご自身の立場や葬儀のスタイルにあわせ、最適な喪服を選択することが大切です。

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