骨壷にはサイズがある?種類や選び方を紹介

2022.03.01

骨壷とは、故人のご遺体を火葬した後、遺骨を納める入れ物のことです。陶磁器製のものが多く、さまざまなサイズのものがあります。また、骨壺を数えるための単位は「口」(こう)が用いられ、「1口」「2口」と数えることを覚えておきましょう。

骨壺のサイズは、地域や用途によって最適なものを選ばなくてはならないため、はじめての方は迷うかもしれません。そこで今回は、最適な骨壺を選ぶために、骨壺の種類や選び方などを解説します。

骨壺の選び方

スーツを着た男性

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はじめにご覧頂きたいのが、こちらの写真です。男性が、骨壷(正確には、骨壷を入れた箱)を抱いています。何か気づくことはありますか?

関東地方にお住まいの方は「何だか、自分の知っている骨壷よりも一回り小さいような……」と思ったかもしれません。

関東や東北で使用される一般的な骨壷のサイズが7寸であることに対し、関西で使用される骨壷は4寸や5寸なので、違和感があるのは当然でしょう。写真の男性が抱いている骨壷は関西の標準サイズのため、関東の方からすると小さく見えるという訳です。

「7寸?5寸?それってどのくらいの大きさなの?」

実際にどの程度のサイズなのか、イメージすることは難しいと思われますので、まずは「寸」の解説をします。

骨壺のサイズを表す「寸」とは

スーツを着た男性

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そもそも「寸」とは、古代中国で生まれて日本に伝わった長さの単位です。その由来は、手の親指の幅といわれています。

寸はメートル法が広く使われるようになる1900年代半ばまで活躍しました。一寸は、一尺の十分の一と定義されています。一尺は約30cmなので、一寸は約3cmです。昔話の一寸法師は、体長わずか3cmということになります。

骨壷のサイズは関東の標準が7寸で、関西が5寸です。ここでの長さは骨壷の直径を表すため、それぞれの大きさは以下のようになります。

・関東の骨壷:7寸→直径約21cm
・関西の骨壷:5寸→直径約15cm

骨壺のサイズがかなり分かりやすくなったと思います。さらに想像しやすくなるように、後程7寸の骨壷と5寸の骨壷を写真でも比較してみましょう。

関東と関西おける違い

なぜ関東と関西で、これほどまで骨壷の大きさに差が出るのでしょうか? その答えはずばり「全収骨」と「部分収骨」の違いにあります。

全収骨とは、すべての遺骨を拾って骨壷に納めることです。一方、部分収骨とは、遺骨の一部のみを拾って骨壷に納めることをさします。関東では全収骨、関西では部分収骨を採用しているため、骨壺のサイズも異なるのです。

「骨壷に遺骨を全部入れるなんて、そんなことできるの?」と驚いた関西の方もいれば、反対に「遺骨を一部しか納めないなんて、残りはどうするんだろう?」と疑問に思った関東の方もいるかもしれません。非常に興味深い風習の違いといえるでしょう。

ちなみに、部分収骨を採用している関西では、骨壷に納めない残りの遺骨は、火葬場が供養してくれる仕組みになっています。

お墓や納骨堂の大きさによる違い

骨壺はお墓や納骨堂に適したサイズのものを選ぶ必要があります。お墓や納骨堂の大きさによっては、6寸、7寸でも収納できないケースがあるため注意が必要です。

例えば、納骨堂はロッカー型や仏壇式などさまざまなタイプが存在するため、あらかじめ適切なサイズを確認しておかなくてはいけません。もちろん、お墓も同様なので、カロートの大きさは必ず測っておきましょう。

男女による違い

男性と女性では体の大きさが異なるため、選択する骨壺にも違いがあるのかと思う方もいるでしょう。しかし、男女による骨壺の違いは特にないため、気にする必要はありません。

あくまでも、どの程度のご遺骨を収納するかによって、骨壺のサイズを決めるということです。つまり、ご遺骨をすべて納めるか、または一部のみ納めるかによって、選択するべき骨壺が変わります。

骨壺の形状の違い

骨壺には大きく白波タイプと切立タイプの2種類があります。

まず、白並タイプは蓋の端が骨壺の内側に入り込むタイプの形状のものです。一方、切立タイプは蓋の端が骨壺の上に覆いかぶさるタイプのものになります。

一般的には切立タイプの骨壺のほうが、湿気はたまりにくいです。ご遺骨は湿気に弱く、カビが生えやすいので、切立タイプの骨壺を選ぶほうが無難かもしれません。

また、骨壺のサイズが納骨堂やお墓のサイズに合ったものである場合でも、デザインが斬新なものの場合、納められない可能性があります。最近は、斬新なデザインの骨壺も増えているため、本当に入るかどうか事前に確認しておくと安心です。

骨壺のサイズ

皿の上に置かれたコーヒーカップ

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骨壷のサイズを実際に比べてみましょう。こちらの写真をご覧ください。7寸の骨壷と5寸の骨壷、そして500mlペットボトルを比較したものです。

いかがでしょうか?明らかな大きさの違いを感じて頂けるかと思います。7寸の場合、成人男性でも、両手を底から回さないと抱えられない大きさです。

ちなみに、この他にも2寸から7寸まで、さまざまなサイズの骨壷が存在しています。

おもに2寸~4寸は分骨、4寸~5寸が部分収骨、6寸~7寸は全収骨に使われます。なお、分骨とは文字通り、遺骨を分けることです。遺骨の一部を取り分けることで、複数のお墓に納めたり、手元供養が可能になったりします。

分骨・手元供養の場合

分骨や手元供養に使う骨壺は、2寸~4寸のものを選ぶことが一般的です。2寸~4寸の骨壺は「ミニ骨壺」とも呼ばれています。関西では、3寸のものを利用する方が多いです。骨壺を安置する仏壇や場所を考慮し、あまりにも大きなものにならないように、手元供養を行う場所に合ったサイズの骨壺を選ぶことが重要です。

一方、2寸~4寸程度の骨壺はペットの供養にも使用されます。鳥や犬などでは、骨の数や大きさが大きく異なるので、最適なものを選ぶようにしましょう。

納骨用の場合

納骨用の骨壺は、5寸~8寸の大きめのサイズのものを準備しましょう。あくまでもひとつの目安ですが、関西の場合は5寸、関東の場合は7寸、改葬など合同で納骨したい場合は、8寸以上が妥当なサイズです。

また、骨壺はオーダーメイドできるものもあるので、8寸以上の大きなサイズのものや、特殊なデザインのものは、オーダーするのもひとつの方法といえるでしょう。

骨壺の価格相場

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骨壺の価格は大きさや素材、デザイン、機能性などによって、大きくことなります。そのため、1,000円程度の安価な骨壺もあれば、数10万~数100万円程度のものまで、価格帯が非常に広いです。

例えば、陶磁器の骨壷の価格相場は、7寸のもので 3000円〜4000円 程度といわれています。一方、分骨や手元供養の際、よく使われるガラス製の骨壺は、2寸~5寸程度の小型のものが多く、20,000~30,000円程度が相場です。また、木製や大理石の骨壺であれば、7寸で20,000~30,000円程度が相場といえるでしょう。

ただし、骨壺を選ぶときには、単純に値段が高ければよいわけではありません。もちろん、大切な故人のご遺骨を納めるものであるため、デザインや価格に気を配る気持ちは理解できますが、素材の耐久性や防湿性、密閉性などを考慮し、適切な価格のものを選ぶことが重要です。

収骨方法の歴史

ドーナツとコーヒー

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全収骨と部分収骨という風習の違いが生まれた、歴史的な背景をみていきましょう。

時は明治時代。明治政府により、神仏分離令が出されます。神仏分離令とは、神道の国教化により国民のアイデンティティを高める目的で、これまでの神仏習合(日本独自の神道と仏教が融合した信仰体系)を禁止するものでした。

この頃、東京の市街地で、火葬場の移転問題が持ち上がります。火葬場からの煙や臭いに対して、近隣住民の不満が溜まっていたのです。

最初は、単に市街地からの移転を検討していましたが、ここに神道派の「仏教思想に基づく火葬を、そもそも禁止するべきだ」という意見が加わります。これにより、明治6年に「火葬禁止令」が出され、すべて土葬となったのです。ちなみに、火葬禁止令前の全国の火葬率は、30%程度でした。

しかし火葬禁止令は、わずか2年ほどで廃止されることとなります。土葬用の墓地の枯渇が原因です。このときに火葬が再開され、同時に火葬後の遺骨をすべて持ち帰るよう政府から通達がありました。関東ではその通達が行き渡り、関西では行き渡らなかったことが、収骨方法に違いが生まれた大きな理由といわれています。

もともと関西では、喉仏を中心に拾った遺骨を宗派の本山に納め、残りは火葬場に委ねる方法が主流だったそうです。また、関西の火葬場には墓地が隣接していることも多く、残りの遺骨はそのまま供養できました。関西で全収骨が浸透しなかったのも納得でしょう。

関東の火葬場における収骨の流れ

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火葬終了後、用意した骨壷に遺骨を納めるわけですが、一体どのような手順を踏むのでしょうか。関東における火葬場での収骨の流れの一例として、神奈川県内の火葬場で実施される収骨の流れを紹介します。

1.収骨台の前に整列 
火葬が終わると、遺骨は収骨台に運ばれます。宗派にもよりますが、二人一組で拾い上げるため、故人と近しい関係の方から二名ずつ並ぶことが一般的です。

2.全員が一度ずつ遺骨を拾う
一度遺骨を拾ったら、後ろの方に交代します。

3.残った遺骨を納める(※ここからは、職員の方が実施)
箸と専用のちりとりを使用し「下半身→上半身」の順に遺骨を納めます。

4.台の上の細かい遺骨を集める
台の上に落ちてしまった細かい遺骨も、はけで集めてすべて納めます。

5.頭の遺骨を納める
あらかじめ分けておいた頭の遺骨を「喉仏→下顎→上顎→側頭部→頭蓋骨」の順に納めます。

6,蓋を閉じて箱に入れる
7寸の骨壷を用意した場合には、すべての遺骨を骨壷に納める前提で進みます。遺骨のかさが多いようであれば、途中職員の方が箸で詰める工程を挟むことがあります。また、4寸や5寸の骨壷を用意し、部分収骨を選択することも可能です。

骨壷の役目はどこまで?

建物の前の花瓶に入った花

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遺骨の入れ物である骨壷は、一体いつまで使うものなのでしょうか?実はここでも、関東と関西では大きな違いがあるのです。

お墓には「カロート」と呼ばれる遺骨を納める部分があります。いわゆる納骨室です。関東では骨壷ごとカロートに納めますが、関西では遺骨を直接カロートに納めたり、綿素材の袋に移してから納めたりします。遺骨を直接納めるのは「自然に還す」という考えに基づくものです。

カロートには、底がコンクリートになっているものと、土になっているものがあります。骨壷ごと納める地域ではコンクリート製が多く、遺骨を直で納める地域では土になっているものが多いようです。

カロートがいっぱいになってしまった場合の対処方法にも違いがあります。

骨壷ごと納めている場合は、遺骨を粉骨処理し、複数の骨壷に入っていた遺骨を一つの骨壷にまとめます。一方、遺骨を直で納めている場合、カロートがいっぱいになることはまずないので、代々同じお墓を使い続けられる点がメリットです。

また、底がコンクリートのカロートであっても、中央に土のスペースが空けてあるお墓もあります。この場合、はじめは骨壷ごとカロートに納めますが、いっぱいになった時点で、土のスペースに入れることが可能です。

骨壺のサイズは納骨先のお墓に合うものを選ぶのが基本

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骨壷のサイズを選ぶ方法は、簡潔にいえば納骨先のお墓の規格に従うことです。カロートの構造から「何寸の骨壷ならいくつ入る」という目安が設けられています。

したがって、おおまかにお住まいの地域や納骨先の地域から判断し、最終的には墓地の管理者に問い合わせることが確実でしょう。

骨壷の標準サイズは関東が7寸、関西は5寸で、このサイズの違いは「全収骨」と「部分収骨」の違いによるものです。また、遺骨をお墓に納める方法も、骨壷ごと納める方法と直接納める方法があります。

骨壷の大きさに迷った場合は、葬儀会社や墓地の管理者などに問い合わせて確認してみましょう。